~~ 市民による地域精神保健 ~~ 

- 健康は権利 - (無断転載はお断りします) 中村佳世

ベルギーの精神保健改革①入院審査


注) 日弁連は、措置入院も差別であり廃止すべきという意見です。また、精神保健福祉法に規定されているのは強制入院であり、強制治療は規定されていないとの見解です。

参考 https://www.nichibenren.or.jp/document/civil_liberties/year/2021/2021.html


ベルギーの改革①
- 司法を介した入院審査 -


1990年、ベルギーでは第三者による入院に必要な条件を定めました。
① 精神的な疾患に苦しんでいることが確認されること
② 自身のまたは他人の健康または生命の安全を害する恐れがあること
③ 他の方法を探ったけれども見つからないこと


これらの条件が全てそろわなければいけません。
③は後の回復のためにも、信頼のためにも重要なポイントです。


入院には本人の意思による任意入院や教育入院の他に、第三者による入院があります。
日本で医療保護入院と呼ばれるものも第三者による強制入院の一つになります。
ところで、第三者による入院の際になぜ司法による入院審査が必要なのでしょうか。
第三者による入院の際には本人の移動の自由を奪うことになります。移動の自由を奪うことは一般の人が行えば監禁という罪になります。たとえ治療のためであっても憲法に定められた自由を奪うほどのものであるのか、上の三点が吟味されます。


① は医師が行います。②と③は関係者から聴き取りが行われます。本人はもちろん、関係者と司法も加わり判事が判断することになります。聴き取りの際には弁護士がつき、また本人が頼りになると考える人を一人選ぶことができます。


ベルギーでは
① 緊急でない場合(10%)には、家庭裁判所の判事は15日以内に書かれた診断書に基づいて、10日以内に全ての関係者が参加する聴き取りを行い、必要な三つの条件が揃っているかを確かめます。判事は3日以内に結果を全ての関係者に通知します。この時15日以内ならば弁護士に相談して一回控訴できます。
② 緊急の場合(90%)は、検察官が決定し家庭裁判所の判事に報告、その後判事による聴き取りが行われることになります。
入院は40日まで認められます。40日後にまだ入院している場合、①判事または、②検察官または、③医局長に決定権があります。外部の精神科医の診断書に基づき再度聴き取りが行われ、その後の入院、または自宅その他での療養を2年以内で設定し、病院はこの決定を受け入れ従います。
移動の自由以外の全ての自由、基本的権利と市民権が守られることが義務付けられています。つまり、言論や宗教の自由、個人的な生活とコミュニケーション機会、状態がゆるせば面会の機会の尊重などです。
2002年には改定があり、治療方法と自身の状態について知る権利が加えられました。そこには治療の選択の自由や特定の治療方法の拒否も含まれます。
2017年の改定では、決定は実行間前に知らされること、一人親の場合はもう一人の親に知らせる義務が課され、さらに家族などへの聴き取りが強化され、家庭裁判所判事により家庭訪問もされるようになりました。
ベルギーに注目するのは、民間病院が多いという特徴が日本に似ているからです。
でも改革が、利用者目線で、自分の国にあるものを活かして進められたことには希望が持てます。
1990年法、実際の法律文はこちらです。
https://www.ejustice.just.fgov.be/cgi_loi/change_lg.pl?language=fr&la=F&cn=1990062632&table_name=loi


フランスとの違い
フランスでは本人の説明と医師の診断書のみを重視するのに対し、ベルギーの判事は、本人は基より関係者からも聴き取りを行い、場合によっては本人宅に出向いて聴き取りをすることもあります。(2017年改定)
ドキュメンタリー映画『12日』はフランスの判事による聴き取りの様子を写したものです。本人たちが賢明に自分を説明する様子が描かれていてとても感動的です。
こちらにその翻訳を載せています。
司法による入退院審査、ドキュメンタリー『12日』 - ~~ 市民による地域精神保健 ~~
私は化学的身体拘束による遺族です。
本来、人はどう扱われるべきなのか、を考えていたら、色々な方からの話でこのベルギーの改革にたどり着きました。そして、サラさんも参加されていたリールという都市での地域精神保健講座を学んできました。



Hospitalisation et le juge de paix en Belgique

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