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- あこがれのかの国のベールがはがされていく学びの日々 -

イタリアの精神保健に関する法律 Basaglia 180

自由と人権にうるさい国、フランスでは2011年に入院審査JLD(Juge des libertés et de la détention) という制度が設けられました。フーコーの『精神医療の権力』を経たフランス人から見ると現在の日本の精神科病院の制度は、あたかも私設刑務所を許す仕組みのようで、信じられないといいます。
西洋の文化をたくさん取り入れて吸収し発展したきた日本ですが、その根底にある人権という考え方を取り入れることには未だ難儀しています。


そこで今日は、フーコーと同時代1978年にイタリアにうまれた画期的な法律!!、Basaglia180をフランス語から訳してみました。
自由と人権とはどういうものなのか、あらためて教えられます。
今日は全10条の内、第5条法的後見制度、までを掲載します。


原文も載せておきます。La loi 180 en Italie | Arkhê
間違いを見つけられた場合はご連絡頂けると助かります。


イタリア180号法(バザーリア)条文 1978年5月13日
(1978年5月16日発行イタリア共和国官報no132, pp.3491-3494に基づく)


第1条 手続き全般および自発的あるいは強制的治療
1 全ての手続きおよびその治療は自由意志による。
2 しかし本法並びに他の全ての法律に明らかに従うと期待できる範囲内において、保健当局は手続きおよび強制治療(TSO)を行うことができる。その際、憲法に保証された個人の尊厳、市民権および参政権は、精神科医と治療場所を選択する自由と共に尊重されなければならない。
3 国および公的制度の責任における全ての手続きおよび強制治療(TSO)は管区内において公的保健制度の基に行う。収容の必要があるときは公的保健機関または条件を満たす施設において実行する。
4 全ての手続きおよび強制治療の全期間中、利用者は望むときにはいつでもだれとでも連絡をとることができる。
5 全ての手続きおよび強制治療は、一貫して被術者の関与を確認しつつ、その自発性を重んじることを最優先するものであると定義する。
6 全ての手続きよび強制治療は、一人の医師の診断治療提案書(理由書)に基づき、管轄区の保健局長としての市長により行われる。


第2条 精神疾患者に対する全ての手続きおよび強制治療
    1 1-2は精神疾患のある者に適用される。
    2 1条により入院による強制治療を行う場合は次の条件をみたすこと。
① 著しい精神的な悪化が存在し、緊急治療の介入が必要と認められること
② 精神疾患者によりその事実と治療が受け入れられないこと
③ 他に可能な限りの適当な保健的措置を探し試みたが見いだせないこと
3 入院をともなう強制治療の手続きは1-6に従い追認され、保健局の医師の公的診断治療書(理由書)に基づき監督される。


第3条 精神疾患者の手続き全般および入院を伴う強制治療に関する手続き
 1 市長は1-6および2-3に基づき作成された診断治療書により、第2条に従い強制入院を決定する。 強制入院から48時間以内に行政の担当者は管内の後見裁判官に通知しなければならない。
2 後見裁判官は、必要な情報資料を入手し最終証明を処理した後、48時間以内に成否の決定をし市長に知らせる。その法的正当性が認められない場合には、市長は強制入院治療の中止を決定する。
3 3-1が満たされかつその被術者の居住区が異なる場合、市長は居住区の市長にもその旨を報告しなければならない。精神疾患者が外国籍または無国籍の場合は、内務省または関係する県の承諾を得て管轄の領事館等にその旨通知すること。
4 7日目を超えて強制入院が継続される場合、およびそれ以上の期間継続する場合には保健当局の担当医師は第6条に従い、その必要期間を定め、強制入院を実施した市長あてに公的診断治療書(理由書)を作成すること。理由書は、後見裁判官あて3-1,2に基づき治療終了予定日を記し通知したものであること。
5 医師は上記に該当する場合の他、強制入院継続の終了時、あるいは強制治療が必要とされた状態の停止の場合にも通知が必要である。また最終的に強制治療の継続が不可能になった理由を市長に通知すること。市長は診断書を受領したのち48時間以内に後見裁判官に通知すること。
6 必要とあれば後見裁判官は看護と財産管理について緊急指示を出すことができる。
7 3-1,4,5に示した手続きを怠った場合は強制治療を終了させることになる。その場合の過失は保健当局の過失が最も重要となる。


第4条 強制治療の留保と変更
1 市民は誰でも市長に対し、強制治療に入るかまたは延長する手続きの停止と変更を求めることができる。
2強制治療の停止と変更の求めがある場合、市長は10日以内にその決断をしなければならない。その手続きは同様の手続きとなる。


第5条  法的な後見制度
1 強制治療に従わされる人、あるいは関心を持つ者は誰でも、裁判所において後見裁判官の決定に反対する訴訟を起こすことができる。
2 3-2により指定された期日から30日以内に市長は強制治療停止の申立てに対し逆に反対訴訟を起こすことができる。
3 裁判を受ける訴訟において、係争中の双方は訴状内または委任状を別添記すことでひとりの正式な代理人をたてることができる。また、裁判所宛て配達証明書留を用いて書面により訴訟を起こすことができる。
4 審問を指揮する裁判所の裁判長は訴状を基に行政裁判所の判決を作成し、訴訟書記官に通知すると同時に、両係争当事者および諸関係当局に通知する。
5 裁判所の裁判長は強制治療を証明する証拠を受領し、国民省に照会をしたならば、出頭の審議以前であっても強制治療を中断させることができる。強制治療中断の要請があった場合は10日以内に結論を出さねばならない。
6 裁判所の長は、必要な資料を入手し、当局に備えられている、あるいは係争者双方への問い合わせにより証拠収集した後、国民省の助言を得て、裁判所会議室において決定をくだす。
7 訴訟および続く全ての手続きは非課税とする。判決は登記を必要としない。


さて、バザーリア法の要旨は、精神科治療は原則本人の要請に寄ることと定めたことです。民間病院での強制治療および入院を禁止し、病床を減らし、多段階の監督を必要とすることを定めました。苦しみや疾患を持ちつつも地域社会の中で自立して生き続けられるようなサポートこそが、治療であるとしたのでした。


のこりの第6条から第10条。
ここで初めて施設収容を伴う場合を扱うことになります。第6条では施設においても地域の保健機関の管理のもとにあることが明記されます。第7条では病棟の新設を禁止、第8条では、これまで収容されていた人について今一度その必要があるのか報告義務が課されます。いよいよ不当に閉じ込められていた人たちが解放される!! ここが山場です!
第9条では職員の身分が保証され第10条には刑法上における人権の回復と差別用語の削除が示されます。


実際の経緯を聴いた後に読むと、遠く1978年当時を振り返って、感動的で感無量です。
翻訳していて想いが湧きあがって涙しそうでした。


イタリアのコミック映画’’Si puo fare’’「人生、ここにあり」や長編ドラマ「輝ける青春」などにこの頃の様子が描かれていて、いずれもとても感動的です。
シルヴァーノ・アゴスティの「ふたつめの影」には実際にバザーリアと共に過ごした人たちが当時を回想しているシーンがあります。「自分を生きているのではなく、まるで自分の影を生きているようだった」と。


バザーリアは北イタリアで医療改革にあたった人で、ゴリツァを皮切に、トリエステでは市当局も含む町ぐるみの改革で成功を収めました。(「むかしmattoの町があった」)
世界中に渦巻いた「自由」と「希望」を求めた60年代、イタリアの成功のかげには、まだ力のあった当時のWHO国連保健機関の後押しも大きかったのでした。


フランスとの関連でいうと、バザーリアはサルトルを敬愛し実践した人でした。
またミシェル・フーコーは人を収監するという考え方について深く考えました。
それでは、精神科を配置するようになった経緯はなんでしょう?


産業革命にともなう効率化、効率のよい人間を育てるという考え方は
効率の悪い人間とよい人間とに分ける考え方を生み、人々をむしばんできました。
一方で、効率的な物として扱われることへの精神の抵抗があり、そこには常に葛藤があります。
参考までにフランスの人権サイトも載せておきます。
CONTRAINTES FATALES – La violence en guise de « traitement » psychiatrique


ところで、現在の日本はどうでしょうか?
世界の1/10の入院患者は日本に、そして圧倒的な民間精神病院の延べ入院日数です。その6割は本人意思によるものではないとも言われます。法的な歯止めはありません。
効率主義の究極が現代の過労死であるとすれば、ずば抜けた強制入院の数と過労死の多さは無縁ではないように思えます。様々な事情から経済は人に優先し人を置き去りにして、敗戦国ニッポンの地位を押し上げてきたとも言えます。


法というものを考えたとき、改めて国が共同体であることが意識されます。
その共同体とは他でもない私たちだとあらためて思うのです。



イタリア180号法 バザーリア)条文 (後半)
( * もし間違いを見つけられた場合にはご連絡いただけると助かります。)


第6条 精神疾患に対する監督と入院を伴う強制治療に関する条項
1  精神疾患に関連して予防、治療、復帰訓練への介入は院外におけると同様の精神保健サービスの機構により平常どおり行われるものとする。
2  本法の発効より以後は、精神疾患に対する治療は入院を必要とする場合も含み、6-3項に想定されるサービスにおいて、国および関連する公的医療機関に責任が生じるものとする。但し後の第8条に規定する場合を除く。
3  地域 – トレントおよびボルツァーノ自治区のように -1977年7月24日の共和国大統領条例により第25条第2および第3項で定義された範囲における区域- においては、本法発効60日前までに診断および治療のための精神保健サービスを一般病院内に設けること。
4  6-2, 6-3で規定されるサービスは、-1969年3月27日の共和国大統領条例の条項第128号、一般病院における特別な強制治療のサービス、それに伴う病床数は15まで- 保護監督下において精神科介入の継続を保証することを目的とする。それらはひとつの部門という形で、その地域に存在する他の精神科サービス機構と共に有機的機能的に相互関連するものである。
5  各地域およびトレント、ボルツァーノ自治区は入院を伴う強制および任意治療を実現可能性について適切な治療と質を有しているか、現行の民間施設を調査すること。
6  援助の必要がある場合、県は、第7条に決める様式に基づき下記に定義される制度に伴う条例を定めることができる。


第7条 地域における精神科の施設的援助機能の移動
1  本法発効の日、県においてこれまでとられてきた精神科入院の管理は正常化に移行し、トレントおよびボルツァーノにおいては特別措置に移管する。
2  条例12、および13条により定義される施設援助 – 1974年7月8日の法264号1974年8月17日386号の改定案 – は身体状態の悪化に伴う施設収容に関するものである。財政管理に関して1978年12月31日までは現行のままとする。
3  本法発効の日に、各地域は精神科の病院についても他の一般病院に関して行われている機能と同様に行われるこのとする。保健法改定に関する本法の発効日までは、どのような場合においても1979年1月1日までは、県は管理およびその他すべての精神科サービスと精神衛生に関する機能をひき続き遂行する。
4  トレントおよびボルツァーノのような自治区においては、地区内の他の保健サービスの組織に従い、これまでの精神科病院を漸進的に超越し改修を進めるなど、精神保健サービスと精神衛生に関する機構の組織を計画し調整すること。県は管理に関する責任以上のものを生じさせる権限はない。
5 いかなる場合も、新たに一般病院内の現存する精神科の使用に寄与する病棟を建設すること、一般病院に精神科を創設すること、一般病院に神経科あるいは神経精神科を創設することを禁止する。
6 1977年12月29日946番法令6条に従い、1978年2月27日43番の法により、県の管理の基にある精神科病院、あるいは補助を受けた精神保健機関、と救済事務所(社会福祉事務所)について見直し修正を行う。
7 6条に示す一般病院の精神科診断と治療サービスなどの精神保健サービスの人事は院外に所属する。
8  県と県、あるいは病院その他の機関間における報告については図表により法に定める。その法は本法発効より30日以内に保健省とイタリア県知事会の承認を得ること。人事に問題のある場合は、より代表的である組合組織の同意によること。
9  人事部職員が7-8にある場合には、県と県、機関と機関の間の財務報告は図式形式の法は6-4に規定される互いに有機的で機能的なつながりの中で権威をもって構築される。
10 1979年1月1日より、契約更新の際の規則を定め、公的精神保健機関の人事の経済状況と給与について、一般病院のそれに見合うよう漸進的に均質化を進める。


第8条 未だ精神病院に収容されている患者
1 本法に規定される規則は本法発効の瞬間から、既に精神病院に収容されている者にも適用される。
2  精神科医長は、本法発効から90日以内に、もし未だ当該施設においての強制治療が必要な場合、収容患者の名前と予想される治療期間を示した理由書により、ひとりひとりの患者についてその住所区の市長に連絡をとること。精神科医長はまた、3-5に規定される項目(強制治療の終了の場合)についても実施すること。
3  市長は、2-3の様式にのっとり入院を伴う強制治療の過程を処理し、第3条に基づき後見裁判官に報告すること。
4  8-3による伝達を怠った場合は、ただちに手続きの効力を失う。過失は当局の怠慢に責が大きい。
5 本法の施行以前に入院させられ、入院治療の必要があると認められる患者に関して、要請がある場合は、7-5に規定された事項、6-2に対しての一時的違反として、現行の精神病院を許容する。


第9条 精神病院の個人的医療への適用
1  保健職における管理職の適用、精神科医長、助手、補助者、などの職は1969年3月27日共和国大統領128号、第4、5、および7により規定されたとおり。


第10条 刑法の改定
1  白書III第1章第3節、第6項、刑法から「精神異常者」の言葉を削除する。
2  同様に「治療施設において」を削除する。
最終的な制定
1  次の法を削除する。1904年2月14日、36号各第1,2,3の2「収容施設および精神異常者に関する条文」および変更。刑法第420、714、715、717条。1967年3月20日第33号で承認された1、2、3項、選挙規定および選挙様式に関する規定。その他それに準ずるすべての条文。
2  第1条から第9条にいたる本法は、現在国立保健局により整備中の法律が完成されるまで効力を有する。


本法は共和国官報ガゼットウフィチアーレに掲載される翌日より発効する。
本法は他の共和国法に追加され、国の権威に委ねられる。


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