人権侵害の可能性 : 訪問支援員の制度化ー医療保護入院の場合
【訪問支援員制度】
〜医療保護入院に制度化し、適用される場合〜
精神医療審査会が機能しない現状の法制度の下で、各人権センターが行なう訪問支援は素晴らしい次善の策です。
訪問活動により透明性が増し、処遇が改善されてきました。それが純粋に仲間を助けたい気持ちからであったことが情熱を持続させ、活動の継続に繋がっていたように見えます。
が、退院そのものはあまり進んでいないそうで、制度の改善は進みません。
更に、人権センターが各地方に働きかけを進める中で、現行の仕組みを据え置いたまま、政府厚労省には「訪問支援を制度化」しようとする動きがあり、そうなると一転、二重の人権侵害になるように思われます。
なぜでしょうか。
まず、自傷他害さえない人が、医療保護入院という強制入院をさせられることは、憲法に保障された自由を奪うことになります。
強制収監には、本来、必ず司法判断が必要です。
基本的な権利を取り上げられ(いわば幽閉され)た入院者を、司法判断の権限を持たないピアサポーターその他の支援員が訪問して支援する、それにより、うまく行けば退院請求に漕ぎつける、という制度がどれほどの屈辱であるか、お分かり頂けると思います。
カリフォルニアのオンブズマン制度は似たような仕組みですが、カリフォルニアには医療保護入院はありません。医療保護入院に応用して制度化することは、更なる人権侵害になります。
また、現在、権利擁護団体による研修を受けた後に、登録さえさせてもらえないでいる良識ある有能なピアサポーター等が多数いるという事実は、あまり知られていません。人選する権威はどのようにして確認されるのでしょうか。支援員としての素養、資格を評価するのは誰でしょうか。
日本の場合、本来するべきは精神医療審査会の機能正常化、機能強化による全件直接審査です。
つけ加えるならば、神出病院や滝山病院のような問題に対処する、精神医療監督署の創設も望まれるところかもしれません。