~~ 市民による地域精神保健 ~~ 

- 健康は権利 - (無断転載はお断りします) 中村佳世

司法による入退院審査、ドキュメンタリー『12日』

ドキュメンタリー映画『12日』予告編



“12 jours”, de Raymond Depardon - bande-annonce


⑴ フランスの強制入院 
フランスの強制入院には
① 自傷他害のおそれなどによる措置入院(periliminant)、第三者の要請による入院 (hospitalisation complète)
② 刑務所からの移転など国の要請による強制入院、困難者病棟入院(Unité maladie difficile) (医療観察棟 ?)があります。

救急は72時間の後に再度診断。通院はCMP 公営精神医療センター, 公営デイ・ケア, 公営療養者アパートなどが設置れています。

他に特筆するべき事として、自助グループGEM, group d entreaide de la maladie を補助する制度があり、運営が任されています。

(こちらも参考にされて下さい↓)

【フランス便り】大学病院で患者に刺され看護師死亡、医師ら声明 | m3.com


患者、家族向けに病院の利用者対応として利用者専用窓口が設置されていて、インタビューさせて頂きましたが、かなり患者よりの感覚であると感じました。

訪問した病院内には一般の人と交流できるアートスペースが解放されていて、若手芸術家などが毎日出入りしています。

が、フランスではこれが一般的というわけではありません。他に民間団体の運営するアパートや関連施設、個別サービスなどがあり、選択肢を広げています。



⑵ フランスの入院審査と退院審査 CRPA法 2011年法(2013年改定)
2011年にそれまでのコミッション制度に代えて、全ての強制入院者に自動的に弁護士がつき判事と直接面談する制度が生まれました。
2011年法では15日以内に、2013年改定で12日以内に、以後6か月ごとに、病院内に設けられた裁判所のアネックスで面談が義務づけられました。

その様子がドキュメンタリー映画になり、昨年暮れに公開され静かなヒットになりました。翻訳を試みましたのでお読み頂けたら大体の様子が伝わるかと思います。


審査では次の2点を本人から直接聴き取り、判定します。
① 入院の過程、入院中の患者の扱いが法的に正しく行われたか ? (人権侵害がなかったか ?)
② 12日目以降も継続して入院するように診断書がでている場合の本人の意思確認。


(3) 対訳、2013年法の実際の面談の現場をドキュメンタリーにした映画« 12jours »

(Raymond Dupardon)
『12日』 レイモンド ドゥパルドン監督


2017年12月に公開された映画で、最近DVDが出ました。(アマゾンなどで購入可能)

聴覚障害の人のための字幕を参考に疎訳しました。
有料ですがダウンロードするとこちらからも見られます。https://www.youtube.com/watch?v=FCQMgvyl0rs 


10人の当事者の例が紹介されています。字面でみるのと、音声のみ通すのと、また画面を通じてみるのでは情報量が異なるのか少し印象が変わります。先入観を避けるために私個人の感想は控えます。
名前は変えてあるそうです。No3 No4 No8は名前がなかったので便宜上私が仮につけたものです。
予告編はこちら。

https://www.youtube.com/watch?v=4QmmxdEtu68


冒頭にこの制度についての解説

「凡人から賢人へ、狂人という途を経る」
ミシェルフーコー


No 1 ゴッベー 男性 判事 : 女性 40歳くらい
判事   こんにちは、えーっとあなたはゴッベー、エリックさんですね。
ゴッベー はい。
判事   1993年8月19日、ブルザンブレスの生まれでいいですか?
ゴッベー はい。
判事   私は判事です。今日は入院手続きが適切であったかについて調べます。
ゴッベー あ、違います。93年じゃなくて83年です。
判事   じゃあ、訂正するわ。多分記入ミスね。というわけで、私はあなたがしたことに対する入院手続きが適切であったかを確認して、12日以降の入院継続について検討を任されている判事です。えーっと、あなたは11月24日に、他害の恐れのある心因性障害精神錯乱により、また自傷の恐れがあるとして…
ゴッベー 付け加えたいことが…
判事   ちょっと待って、調べるから。
ゴッベー つまりその僕の精神錯乱で… その人が無事だといいと思っています。。 
                 « 沈黙 »
判事   どういうこと ?
ゴッベー 僕が襲った人が無事だったらいいな、と思います。
判事   さあ、どうかしら。ここに来るまでのこと、どんな状況だったか覚えてる ?
ゴッベー その人の頭を一発殴って立ち去りました。で、警官に捕まってここに連れてこられたんです。だから、僕の錯乱が何なのかはわからないけど、でも僕のしたことは殺人じゃありません。
判事   あのう、あなたが殺人を犯すとは誰も思ってないけど。
ゴッベー ふうん、別に発作というわけではないんですよ…
判事   はあ ?
ゴッベー 僕らが何かするのは発作っていうわけではないんです。
判事   。。。あなたは前にも捕まってるようですが…
ゴッベー 僕は間違ってたと思います。
判事   自分を傷つけたり誰かを傷つけたりする前に、えーっと、 « ヴィエンの路上で他害行為に及んだため措置入院の患者 » そう ?
ゴッベー 他害行為って何ですか ?
判事   道端で誰かを攻撃したってことよ。
ゴッベー はい、誰かの頭を一発殴りました。
判事   知らない人 ?
ゴッベー はい、誰か知らない人です。
判事   わかりました。なので、また再犯に至らないように集中治療する必要があると判断されました。というわけで、医師は今のところあなたには強制入院を続ける必要があると言っているのですが。どう思いますか ?
ゴッベー 入院を続けるのはいやです。外に出たいんです。
判事   出て何をするの ?
ゴッベー うちがあるから帰って僕の家族の面倒をみます…
判事   誰と暮らしてるの ?
ゴッベー 誰とって、彼女はいないけどリヨンに僕の家族がいるから。そこに帰って、まじめに考えてやる気をだして、仕事を見つけてうまく終わりまで働きたいんだ。
判事   前に働いたのはいつ ?
ゴッベー 2年前。
判事   その時は何をしてたの ? 仕事を探してたの ?
ゴッベー いいえ、精神病院に。
判事   では、先生、何か合法性または事情についてご意見を伺いましょう。
弁護士  簡単に。手続き上の正当性については特に所見はありません。特に難しい問題を提起する書類ではありません。本案についての判断はゴッベーさんの話をお聞きになったとおりです。彼はこの入院については意義を唱えています。彼は強制入院の解除を求めています。残念ながら判断を同じくしませんが、ゴッベーさんの一連の話の他に彼がここでお話したこと以外で、診断書が特に彼の要求を支持しなければならない理由について、申し立てをする要素は見当たりません。
判事   退院は私には時期尚早に見えるけど。犯行は説明されていないし、また再犯の恐れもあるし。
ゴッベー それは説明しました。その人は帰ったから、僕はその人を助けたいのです。
判事   その人は望んでなかったと思うけど。
ゴッベー いえ、僕に何が問題か聞きました。だから僕はその人に彼らを助けたいといいました。彼らは僕を倒して、彼らだって。
判事   でも襲う必要はないでしょ ?
ゴッベー それはまあそうだけど。。でも僕は連れてかれるままにしてました。
判事   また繰り返さないためにはもう少し状態が落ち着かないと。
ゴッベー でもそんなに大したことじゃなかったし。
判事   治療してよくならないと、精神科の先生も再犯の恐れを心配して、まだ見守りが必要だって。まだ精神錯乱の状態にあるから。
ゴッベー いいえ、錯乱してません。幻聴も聞こえてないし。
判事   あなたは隔離室にいるわね。
ゴッベー 僕がその人を叩いたのは間違ってたことを認めます。でも、考えてみてください。もしあなたが子供とご主人と一緒に歩いていて、その子が道に飛び出したとして、「ブラボーおめでとう、あんたの子が車にぶつかりそうだよ、放っとけよ !」って言いますか ?
判事   じゃ、ここにサインしてください。あとはあなたの決断のコピーをとるから。
ゴッベー どこに ?
判事   あなたの名前の下、そう。これはあなたに。あなたはコピーを持っててくださいね。はい。あなたはこれ。サインの必要はありません。はい、これはあなたに。もう行っていいですよ。



No 2  アニック・ムーリ 女性55歳 判事 男性 60歳位 弁護士 男性 40歳位 
判事   こんにちは。お座りください。あなたはアニックムーリさんですね。
アニック はい、そうです。
判事   誕生日は1961年、10月28日、生まれはリヨンのどこですか ?
アニック 二番街区です。
判事   二番ですね、はい。
アニック ホテルデュー病院です。リヨンでいいおうちの人たちと同じところです。
判事   は ?
アニック 生まれのいい人たちと同じ病院です。(照れる)
判事   はいはいはい、他の病院で生まれる人もいますからね。それも許可されてますから。住まいはリヨン市ヴェルレーヌ通38番 、5番街ですね。
アニック その通りです。
判事   独身ですか ?
アニック はい。
判事   お仕事は何ですか ?
アニック オレンジで働いています。あの会社。。
判事   ああ、はいはい、オレンジね、電話会社の。
アニック 昔のフランステレコムです。
判事   はいはい、いいですよ、わかりました。どの部署にいますか ? どこですか ?
アニック 私の部署ですか ?
判事   はい。
アニック 課金サービス課てす。
判事   はい、いいですよ。では、そうですね、間違いなければ、あなたが具合いが悪くなってエドワードエリオ病院に来たのは、11月11日ですね。
アニック あまりよくありませんでしたが、それほど悪くもありませんでした。
判事   それは知りませんが。つまり…
アニック 医師たちはそうおっしゃってますが。。
判事   まずあなたの雇用主が、つまりあなたの会社のだれかが…
アニック 雇用主です。
判事   あなたの具合がよくないのを見てリヨンエドワードエリオ病院に連れてくることにしたのですね。
アニック 彼は、自分がこんなに親切でこんなに人間的でこんなに人を思ってるってことを見せたかったんです。私が何かやらかすんじゃないかと決めつけて。
判事   何かご自身に心配ごとがあったんじゃ ?
アニック 私に ? いいえ !
判事   私は何も知りませんが。何も。
アニック でも私は泣いてました。
判事   そう。
アニック 朝にも同じことがあって。
判事   何があったんですか ?
アニック 部長とちょっと摩擦があって、彼のせいで何も食べてなくて。私… ふう ! 同僚たちもみんな沈黙して秘密にしてるし。ちょっと微妙で。。(震えた声で)
判事   はいはい、わかりました。で、どうでしょう、病院では具合はいかがですか ? 来た当時より良くなりましたか ?
アニック はい、だいぶ気分がよくなりました。だって、私が来たときは縛られてたんですから。
判事   それは調書にも書かれていました。
アニック どっちにしても、そんな必要はなかったでしょ! それはすごい暴力だったのよ ! (訴える)
判事   それは医師の責任を果たすための医療的判断ですから。あなたが興奮してたから、医師たちはそれが必要と判断したんですよ。
アニック いいえ、錯乱していたと言われることについて私は医師達とは見解を共にしません。
判事   はい。
アニック だって私はいつもと変わらないようにしていたし。ここに着いたときだって私の扱いに対して大人しくしてたのに。いきなり、、私の周りに何人いたか知ってる ? 12人よ、12人 ! 服を脱がされたかと思うとパジャマを着せられて。。
判事   錯乱に対応するには大勢人が必要だと思いますが。。
アニック それはそうでしょうけど、12人もよってたかって私を括り付けて、2分後には何もできない状態だったわ。それってとても暴力的ですよね ? !
判事   そうですね、そう思います。
アニック 想像してみてください。わたしは自制心を保って彼らのするままにしていたんです。観念して脳は思考停止になりました。
判事   つまり要約すると?
アニック 錯乱してませんでした !
判事   あなたはもう少しここの病院にいた方がいいと思いますか ?
アニック ええ、ええ。
判事   医師もあなたがここに入院していた方がいいというのは正しいでしょう。
アニック でも、いづれにせよこれは言っておきたいわ。ここに来てどのくらいかしら ?
弁護士  10月からです。
アニック そうだわ、10月のことでした。例年のリヨン光の映画祭があって。
判事   知ってますよ。
アニック でしょ。私行くのが大好きで毎年行ってるの。土曜日だったわ、何日かは忘れたけど。その土曜の日に…私写真撮るのが好きなの。ちょっと時間頂いていいですか ? 涙がでて… 
判事   はいはい。大丈夫ですよ。心配しないで。
アニック 映画祭に行くためにかばんとカメラを用意して。
判事   光の映画祭ですね。
アニック 土曜日で、素晴らしい日で、太陽が… (泣き声)
判事   それで ?
アニック それなのにそこに行く代わりに、救急に行かなければならなかったの。
判事   気分がよくなかったからですね。
アニック いえ、気分はよくなかったですけど、金曜日に…金曜日じゃないわ、私金曜は仕事じゃないから。木曜にまた嫌なことがあって、職場でハラスメントがあったんです。
判事   職場でうまくいかないことがあったんですね。
アニック そうです。
判事   私の理解するところでは、そうですね。
アニック それが原因だと思います。
判事   はい、よくわかりますよ、あなたの仕事には難しいことです。
アニック とてもとてもきついです。
判事   それではピカール弁護士のご意見を伺いましょうか。
アニック すみません。(涙をふく)
判事   いえ大丈夫ですよ、どうも。
弁護士  ありがとうございます、判事さん。この調書の中には入院手続きについては特に指摘することはありません。ただ、アニックさんとの聴き取り調査で一つ指摘しておきたいことがあります。というのは、職場でアニックさんに苦痛を強いた迫害についてですが、医師にその解釈について質問したのですが。。彼は、オレンジで働いていて…オレンジで起こっている訴訟のうわさはみな聞いていると思います。ですから、アニックさんを苦しめたのも同じようなことかと。
アニック 迫害です。
弁護士  医師がそういったわけではありませんので、医学的には迫害妄想というのかもしれませんが、この職場における暴力、わたしは敢えてそう言いたいと思います。手続きについては特に見解はありません。
判事   ありがとうございます、先生。確かに私もそう思います。もう少し入院は継続する必要があるようですね。書記さん、私は入院継続手続きを進めたいと思います。
アニック いいです。まだ傷口があいたままだから。
判事   というのは、間もなく医師と退院できる日を相談することになるということですから。
アニック 退院してもっと力をつけるために職場に戻ります。
判事   それが、間違いありません。
アニック 私、絶対やりぬくわ。自分に誓ったんです。



No 3 ズーマー 男性40歳くらい 判事 : 女性 60歳くらい  弁護士:男性40歳くらい
判事   えー、私は入退院審査判事です。
ズーマー はい、覚えています。
判事   今日なぜお会いしているかを説明します。
ズーマー 強制入院させられたからです。
判事   私は説明するためにここに来ていますから、あとであなたにもご発言願いますね。いいですか ? 順番にね。
ズーマー ありがとうございます、閣下。
判事   判事さん、で結構です。
ズーマー はい、判事さん。
判事   あなたは強制入院して間もなく12日になりますね。
ズーマー 12月1日からです。
判事   法律に基づき、12日以内に判事が強制入院されている方全員にお会いすることになっています。
ズーマー はい。
判事   ここにいてどうでしょう、具合はいいですか ?
ズーマー ここは自分の居場所ではありません。自由になりたいです。
判事   なるほど、わかりました。治療は必要と思われますか ?
ズーマー 必要です。でもこれまでのようにペラシュの隣にある精神保健センター(CMP)の方がいいです。
判事   つまりあなたは精神保健センターで治療が可能と考えているのね。
ズーマー そうです…
判事   病院ではなく。
ズーマー はい、病院ではなく。フリーの訪問看護師でも50ミリグラムのリスペダルの注射ができます。それが増量後の投与量です。
判事   つまり治療には同意だけど、家から精神保健センターに予約してする形がいいんですね。おっしゃることをそのように理解しましたが。
ズーマー そのとおりです、判事さん。すみません、舌がもつれてまして。
判事   いいえ、よく聞き取れますよ。
ズーマー 活舌訓練を受けるのもいいかもしれませんがあまり気が向きません。オシも訓練受けてますので。
判事   結構です。ありがとうございます。それでは弁護士さんの番です、どうぞ。
ズーマー はい、判事陛下。
弁護士  彼女はよく調べてくれてるから。
ズーマー ありがとうございます。
弁護士  ありがとうございます、判事さん。私のクライアントは確かに強制入院には異議を唱えています。というのも、自分で治療を進めていくことができると考えているからです。強制入院の枠内ではなく、通院治療を希望しています。同時に精神医学の専門家を要請しています。でなければ強制入院を終わりにして治療付き任意入院に切り替えて欲しいと。
ズーマー でなければ、単なる精神科医ではなく精神科と臨床心理の専門家で。
判事   結構です。
ズーマー 何週間も続けば光の祭りに間に合わなくなってしまうから。
判事   はい、今度は私の話を聞いてくださいね。
ズーマー 見てください。これが病院が私にしたことだよ。(腕の傷をみせる)
判事   聞いてください。
ズーマー 縛り付けられたんだ。見てください。
判事   ええ、そうね、わかりました。
ズーマー アップで撮ってください。お願いします。アップでね!
判事   では私の立場をご説明しますね。
ズーマー はい、判事さん。
判事   いいですね、私は医者ではありませんしその任務は課されていません。
ズーマー はい。
判事   で、診断書にある通りあなたはまだ強制入院が必要だということです。
ズーマー それは権力の乱用です。法務省と保健省に届け出します。
判事   最後まで聴いてくださいね。あなたの権利について説明しますから。あなたは次の権利を有しますのでそれをご説明しますね。法によれば。。
ズーマー ね、そう言ったでしょ。だからそうだと思ったよ。
判事   診断書は承認されました。この入院を続行することを医師に許可することとします。
ズーマー それには及びません。届け出ますから。。
判事   それから、専門家は必要ないと考えます。今日はこの決定を下しますが、再審請求ができます。それまでにまだ10日あります。
ズーマー もっと早くはできませんか?
判事   弁護士さんが一緒にやってくれますから。
弁護士  病院長を通じて直接再審請求できるから、それを書けばいいんだよ。
判事   どうぞ。
ズーマー また10日も。
判事   特に。。病院でそれができますから。
ズーマー 本当に権力の乱用ですよ。やれやれ、こんなのを人権の国って呼んでるんだから。
判事   でも診断書は何人もの別々の医師の書いたもので、あなたに会った医師がみな同じことを言っているんですよ。
ズーマー みんな同じ病院の人たちですよ。病院外の人を連れて来てないんだから。みんな同僚です。同僚仲間と言っていい。グルになって徒党を組んでる奴ら。。
判事   CMPの医師はどうなの ? もっといいんですか ?
ズーマー オディヤードさん ? 真っすぐな人だ。ちょっとお堅いけど。
判事   どっちにしても今はまだ早いです。
ズーマー そうだろうと思ったんだ。(弁護士に) ね、言っただろう。権力の乱用だ。
弁護士  もう一度言うけどあなたは再審請求ができるんだから。
判事   これはあなたにですよ。こっちのはあなたに。そこに小さな欄があって、再審請求の仕方が書いてあります。ではもう行っていいですよ。
判事   ではよい1日を。
ズーマー ありがとうございます。権力ご乱用の女王判事殿。



No 4 トラブル 男性 60歳、 判事 : 女性40歳くらい、弁護士 : 女性40歳くらい
判事   では、よろしいでしょうか。私は入退院審査判事です。今日はあなたの手続きに関するすべてが法律どおりかどうか確認するのが私の役割です。
トラブル え、何ですか ?
判事   今日は、例えばあなたの診断書がしっかりあなたの精神的な問題に関して十分に書かれているものかを確認するのが私の役割です。
トラブル よく聞こえないんです。色んな声のせいで集中できない。
判事   ああ、あなたには声が聞こえるのね ?
トラブル ええ、メモをとってもいいですか ?
判事   私の声以外に ?
トラブル 電気ショック椅子の声が絶え間なく聞こえてます。
判事   では、今日の聴き取り調査を済ませるために、いいですか、この入院を継続するかどうかに関しての手続き、それが課題です。わかりましたか ?
トラブル いいえ。
判事   いいえ ? あなたは2015年の5月21日からここにいますね。もう一年以上になります。
トラブル はい。
判事   あなたがここに来たのは当初自傷の恐れでしたね。あなたは自殺の危険性がおおきかったから。自殺しようとしたのね。
トラブル いいえ、自殺したいと思ったことなんてありません。
判事   違うの ? 自殺したいと思ったことはないの ?
トラブル 聞こえません。
判事   その声はあなたに自殺をそそのかしたりしませんか ?
トラブル 電気ショック椅子の声が聞こえます。
判事   電気椅子は何と言ってますか ?
トラブル 彼らはいつも私の部屋の明かりをつけます。自分で払ってない電気代の恩恵に預かろうとしてるんです。患者や看護師の電気をみんな点けちゃう。
判事   そう、では確認に入りますね。一年経過時の同僚の見解も含め、診断書はみんな揃っているようですから。
弁護士  はい。
トラブル 中学校の判事 ? (同僚と中学が似た発音)
判事   医師の同僚です、わかりますか。何人も医師がいるんです。精神科医。
トラブル なんで私に中学のことなんか話すの ? 私もう学校なんて行ってないのに。
判事   だから、この同僚っていうのは三人の医師で、一年経ってあなたにまだ入院が必要かどうか知るために集まるのよ。あなたの状態がどんな風かって。
トラブル ふうん、なるほど。
判事  というわけですので、 10月20日付けの診断書では外出ができたと記録があります。覚えてますか ? 外出できたんですか ? この数か月 ?
トラブル ?   何処へ行ったって ?
判事   ここ数か月。
トラブル うん、兄とお母さんと一緒にいる許可?  
判事   そう。
トラブル いいえ。
判事   いいえ ? 出来なかったの ?
トラブル いいえ、何があったか覚えていません。
判事   そう。医師たちは問題なくなかなかうまくいったと。「患者はこの外出はとても楽しめた」と言っている、って書いてあるけど。
トラブル えっ ? 頭から ? (音が似ているため聞き間違える)
判事   いいえ、書いてあります、と。
トラブル チームで ?? (音が似ているため聞き間違える)
判事   書いてあるんです ! この外出はなかなかうまくいった、と先生たちは言ってるんです。
トラブル 看護師たちとの外出のことですか ?
判事   家族です。
トラブル 今年 ?
判事   そう。
トラブル 今年はバカンスなんて全然行ってないけど。僕がお母さんの別荘に行ったかどうかお知りになりたいですか ?
判事   いいえ、それは私の質問とはちがうわ。いいですか。先生たちは10月20日の最後の診断書で治療は完全入院が必要と書いてありますが、ご自分ではどう思いますか ?
トラブル ちゃんと薬は飲んでますよ。
判事   そう ?
トラブル そうですよ。前に比べれば叫ばなくなったし。いいことと言えば前よりも叫ばなくなったことです。
判事   じゃあ、ここに残ることに同意なの ? それとも嫌 ?
トラブル いえ、勿論出たいです。絶対。
判事   で、何処へ。
トラブル サボアです。お母さんのところ。お金のことはどうしたらいいのかわからないけど。もう忘れちゃった。
(後見人が何か言いかける)
判事   何でしょうか、何かおっしゃりたいことがありますか ? 
後見人  彼のお母さんのところに戻るのは無理です。あなたのお母さんはとても疲れていて、それにもうお年ですから、もうあなたの面倒を見ることはできないのよ。
トラブル できますよ、とても勇気のある人なんだ。それにとても献身的な人なんです。
後見人  もちろん、その通り、それには反論はないわ。でもある歳になるとね。いろいろ難しいのよ。
判事   どちらにしても、医師たちはまだ入院治療が必要だと言っています。医師が治療するのはあなたで、お母さんではないでしょ ? というわけなので、私はこの入院審査(procedure)の正当性を認めることにします。
トラブル なんで訴訟手続き(procedure)について話すんですか ?
判事   なぜ入院審査(procedure)について話しているか、ですか ?
トラブル ここ裁判所でもないのに。私、裁判所に行くようなことしてませんよ。
判事   あなたが裁判所に行くっていう話ではないけど強制入院の手続きのことです。それをこう呼ぶの。



No 5 ザイード男性 20歳 判事 : 男性 60歳くらい
判事   あなたはベルノック ザイードさんですね。
ザイード はい、そうです。
判事   1995年8月29日生まれ、四日後に入院6か月になります。というわけなので、現在状況について再審査が必要です。
ザイード 僕は間違えました。
判事   え、何と ?
ザイード 間違いを犯しました。間違えました。5月14日にある間違いを警察に知らせたんです。警察に電話をしました。午前3時でした。
判事   それで ? 何があったんですか ?
ザイード うちからです。警察を呼んだのは、うちの隣でセクトの集会をしていたからです。
判事   お隣でセクトの集会を ? 何をしていたんですか ?
ザイード イスラム教徒の集会です。
判事   イスラム教徒の、なるほど。
ザイード イスラム教徒というよりイスラム過激派といいたいです。。
判事   イスラム過激派、つまりあなたのお隣がテロリストということ。
ザイード テロリストです。そうです、テロリストです。
判事   わかりました。
ザイード 証拠があるんです。地下倉庫に行ったら、そこで、そこで、地下倉庫で、カラシニコフを見つけたんです。それで、それを掴んで、そんなもので間違いが起こったら嫌だから掴んで。。
判事   それで、そのカラシニコフを何処にしまったんですか ?
ザイード 引き出しの一番上にしまいした。おばあちゃんが昇っていけないところに。
判事   なるほど。それで、最近の診断書ですけど、いいですか、こんな内容です。あなたの行動は重度かつ執拗な狂信的な統合性失調症、難治的併発多重依存症により起こす行動の混乱が激しいために入院を承認されました。ということは、想像するに前から大麻をやってたんではないか思うんだが。あなたは何を使ってたのかね、薬としては ?
ザイード 大麻とコカインです。
判事   それだ。コカインだ。刃物などで介護士に何度も危害を加える話が記録されてますよ。それから、君は未成年だった頃に前科がいくつか記録されてます。まだ君は若いから、まだ二十歳なんですね。
ザイード 21歳てす。
判事   まだ21にはなってないよ。君は96年の8月生まれだから。今20歳と半年です。まだ20歳と半年になったばかりだ。だから、医療チームは、国の決定に基づいて精神科の治療が必要と判断して、引き続きその必要があるといってますよ。あなたご自身はどうお考えですか ?
ザイード それは正しいと思います。最後の言葉を言いたいと思います。
判事   あなたはあと1か月いたいと言ってるのですね。そして1か月後に退院をと。あなたの希望はそれでいいですか ?
ザイード いいえ、そうじゃありません。
判事   じゃあ、何を言いたいのですか ?
弁護士  彼は最後の言葉を言いたいと言ったかと思います、判事さん。
判事   ああ、最後の言葉、ごめんなさい。何をおっしゃりたいのですか ? (mois とmotの聞き違い)
ザイード 僕はちょうど悪い時に悪い場所を通りかかったんだ。それで、運よく、運よくこのカラシが僕の手に入った。僕は金の卵なんだ。僕は鼻からカラシの子なんだ。。僕は正直だ。カラシは役に立つだろう。絶対に、カラシは役に立つ。でも、でも、悪いやつらをやっつけるのに。悪いやつら(イスラム過激派)はきたないんだ。侮辱してやる、こう言って。。
判事   いや、侮辱することは言わない方がいい。その方が。
ザイード 奴らみたいなのは間抜けでイスラムなんか信じて、人のうちに強盗に入って、それは僕らの2つの国の戦争だ !
判事   いいでしょう。入院についてはどう思いますか ? 続けたほうがいいですか、それとも終わりにした方がいいと思いますか ?
ザイード 自分では終わりにしたいと思います。
判事   あなたの希望は終わりにしたいということですね、それでそれは可能ですか ? いい質問でしょう。
ザイード すみません。
判事   では、先生、あなたのご意見は ?
弁護士  はい、判事さん。実際、彼はこの強制入院があまり気には入ってません。同時に治療が今のところ役立っているとも示唆しています。実際その意識があり、治療がかれには必要だと。しかし、本当に難しいのは、その入院の形態について異議を述べています。
判事   心地よくないと。
弁護士  (はい、と身振りで)
判事   わかりました。今日のところは引き続き治療を承認することにしました。あなたも静かなところに隔離されてだいぶ穏やかになりましたから、今後はよくなっていくことでしょう。でも引き続き。。
ザイード そのとおりです。僕はキチガイです。
判事   そうは言ってません。私が言ってるのは
ザイード 僕は1080足す20がいくつになるかわかりません。
判事   1080足す20はきっかり1100だよ。で、その数字は何なの ?
ザイード 僕は2000だと思ったんです。
判事   いや、1080足す20は1100だ。でもそんなことじゃない。それがてきないから、足し算ができないからじゃあない。
ザイード 僕が知的じゃないから。。
判事   そういうことじゃない。。
ザイード 僕は精神病なんだ、ひどい精神病なんだ。
判事   違います。あなたは治療が必要なんです。まだ混乱があるからもう少し入院が必要だね。
ザイード 僕はきちがいだ。僕は人として精神が狂気なんだ。劣った精神なんだ。生まれつきの劣っているだ。
判事   じゃ、いいですね、よかったら、ここにサインしてください。
弁護士  ここだよ。
ザイード あの、あんまり好きじゃないものがあるんですが。小さな緑色の枡がなくて
判事   小さな緑色の枡って ?
ザイード 小さな緑いろの枡で印をつけるやつ。
判事   何のこと ?
(沈黙)
ザイード ええ、そう。
判事   何のことを言っているのかわからないが。
ザイード 僕もよくわからないけど。小さい枡で、ご滞在はいかがでしたか ?って訊くあれ。
判事   ああ、そう、満足度チェック表のことですね。待遇はいかがでしたか?とか。そういうものではありませんよ。
弁護士  ありがとうございます。
判事   はい、これで今日は終わりです。あなたはまだもう少しここの施設にいることになります。治療のために。いいですね ?
ザイード はい。
判事   はいどうぞ。よい1日をお過ごしくださいね。
ザイード はい、ありがとうございます。
判事   しっかり治しなさいよ。
ザイード ありがとうございます。ご恩返しは必ず。もし、いつかサッカーのプロ選手になった暁には、この病院に寄付します。
判事   わかりました。みんな待ってるから。
ザイード そうだとうれしいです。
弁護士  わかったよ。
判事   その決意を忘れないように。
ザイート はい。
判事   そう、じゃあさようなら。
ザイード さようなら。
弁護士  さあ、行こう。さようなら、判事さん。



No 6 ベファー 女性 37歳 判事 : 女性 60歳くらい
判事   えー、あなたは間もなく強制入院から12日を迎えますね。
ベファー はい。。
判事   えー、私の役割は医師とは全く別です。ただあなたが入院されたときの手続きに問題がなかったか、法が適切に守られていたかを確認することです。
ベファー はい。。
判事   特に、私は診断書を参照しながらあなたが同意のないままフルタイムで入院したのには十分な理由があるかどうかを、12日以内に見ることになっています。
ベファー わかりました。。
判事   私の役割はわかりましたか ?
ベファー はい。。
判事   いいでしょう。この入院についてあなたはどう思いますか ?
ベファー えっと、私は同意しません。だって私は死ぬためにはうちに帰りたいんです。
判事   死ぬために。
ベファー 私は3階から飛び降りて死にたいんです。でみんなは私にそうさせまいとしています。そのせいでみんなは私に病院に留まらせたいんです。
判事   そう。あなたはみんながあなたが自殺するのを放っておきたくないってことがわかるのね。
ベファー いいえ、わかりません。
判事   そうですか。
ベファー みんなは、家族が寂しがるよとか、あなたのペットたちが寂しがるよとか言うけど、私の苦しみについては何も考えてないじゃあないですか ?
判事   だから、ここで治して苦しみが減っていくのよ。
ベファー いいえ、強制入院でここにいなければならないからいるけど、全然治りたくなんかないです。私は死にたいんです。私を放っておいて欲しい。私は37年間苦しみ続けた、苦しみ過ぎたんです。もうじき37歳になるけれど、私の人生は苦しいだけでした。確かにいい時もあったけど、それ以上に沢山、本当に沢山の苦しみがありました。
判事   いいでしょう。あのう、何か見て思うところはありますか ?
後見人  いいえ。実際ベファーさんは被後見人となっています。私たちもベファーさんのことをよく知っています。私は彼女をとてもよく知っています。彼女は治療が必要だと信じます。
判事   彼女は何が必要と ?
後見人  彼女は自分の治療をする必要があります。
判事   自身の治療が必要と。
後見人  彼女を治療する必要があります。入院は適切かと、その、彼女が自信を回復するために、思います。
判事   彼女は被後見人になってどのくらいですか ?
後見人  大体13年くらいです。
判事   13年。。もし暑かったらアノラックを脱いでくださいね、暑くないですか ?
ベファー はい。。
判事   いいでしょう。弁護士さん、何か見て思うところはありますか ?
弁護士  入院の状態については何もありません。特には全く所見はありません。時を得て正しく遂行されていると思います。実際、現に自殺の危険があったことが過去にも証明されていますし。彼女が語ってくれた以外にも。彼女は自殺を試みたことがあり、それが未遂に終わったために長い入院経験があります。今日は、彼女ははっきりと病院にはいたくないと言っています。がそれが自殺をするためだとすると。。私たちは少し混乱します。しかし、どちらにしても前向きな案件があります。彼女の説明にはなかったことですが。と言うのはソーシャルワーカーの方と家に帰れる可能性について話し合ったのですが、個室付きの療養型アパートはどうかと。原因となっているのは。。
ベファー 孤独が重いんです。もう耐えられない。
弁護士  それなら集団生活ができるでしょうから。
判事   確かにとてもいい考えだと思うわ、療養型アパートというのは。
ベファー はい、そう思います。それはとてもいい考えです。
判事   まだペットの飼える療養型アパートというのがあるかどうかは保証がないですけどね。
ベファー 多分、犬か少なくとも猫なら見つかるかも。離れたくないんです。犬は時々会えるときに会えればいいけど、猫とは離れられないです。お願いです。それは子供を取り上げられるようなものです。
判事   わかりました。いいですか、それについてはまだ決められないですよ。まだ現実に実現可能かどうかは決まっていませんよ。
ベファー 現実は、治すことです。
判事   そうです、いいですね。そのとおりです。
ベファー でも、そんなことしたくないんです。
判事   そう、でも実際、そのためにあなたを治療しているのよ。あなたが自殺しようとしから。。
ベファー でも、あなたにそれをする権利があるんですか ?
判事   さて、そうね、私は。。私は法律が私にあなたが自殺していいかどうかという質問に答えを出すことを要請しているとは思わないけど、だってそれは私の役割ではないから、 ね ? 私は一つだけ確認したいのは、すべての診断の結果が一致しているということです。 手続きは正当に行われましたので今日のところは引き続き強制入院のをという診断書の方針を承認します。
ベファー わかりました。
判事   焦ってはだめですよ。でないとまた元の木阿弥になってしまうから。いいですね。あなたはここにサインしてください。コピーを差し上げます。それから、10日後に再審請求できることを覚えておいてください。
ベファー 再審請求しても何の得にもなりません。勝つ見込みもないってことはよくわかってますから。
判事   そうね、それは賢いわね。
ベファー いえ、そうではなく、それで勝てる見込みがないことを知っていんです。
後見人  君の利益にかなうことだから。
判事   妥当な表現ね。



No 7 ヌオーリ 男性 34歳, 判事 : 男性 60歳くらい, 弁護士 女性 40歳くらい
判事   こんにちは。ヌオーリさん。
ヌオーリ こんにちは。
判事   どうぞおかけください。いいですね。あなたには以前お会いしてますね。私は裁判所の判事です。あなたはマイアンベ ・ヌオーリさんですね。
ヌオーリ そのとおりです。
判事   ですね。あなたは82年の3月13日アンゴラのルワンダで生まれました。あなたはアンゴラ人ですね。
ヌオーリ そうです。
判事   つまり、もちろん、だからそこに居られないんですね。何年も路上生活をしていたんですね。そして。。
ヌオーリ 刑務所に入れられました。
判事   そうですね、あなたは刑務所に入れられていました。それで拘置所に拘留されていたけれども責任能力がないと認められたんですね。というわけでそのあと再審審査室が精神科入院を言い渡したわけですね。
ヌオーリ そうです。全て正しく行われました。心配はありません。8年間法を犯すようなことはしていません。だから、僕が他の人みたいに外出するのをどうして許可してもらえないのか理解できません。
判事   はい、でも、そうですね、分かります。
ヌオーリ 病院から出て、というのは病院ではもう何もすることがないから、仕事を探したいんです。
判事   あなたは、法律で規定しているとおり、うちの書記あなたの件について審問を依頼したんですね。強制入院を終わりにできるかどうか。さて、おっしゃってくださいね、その点についてあなたの状況を明らかにしたいと思います。今どの棟にいらっしゃいますか ?
ヌオーリ キャンディレです。
判事   はい、その通りですね。以前あなたは難病棟UMDにいたことがありましたね。
ヌオーリ そうです。
判事   難病棟UMDを出てからどのくらい経ちますか ?
ヌオーリ 4年になります。
判事   4年ですね、確かに。で、今の病棟はいかがですか ?
ヌオーリ とってもうまくいっています。何も言われませんし。詳しく言うと、オディヤー先生が病院から出て、街へ外出する許可をくれたんです。病院から出られる許可をもらったんです。社会復帰の大学に通う承認を貰いました。だから、外に出て、盗んだりみたいな馬鹿なことをしないで落ち着いて暮らせるようにその手続きを進めてくれています。
判事   その通りです。
ヌオーリ 僕は仕事をします。そうすれば自分の欲しいものを自由に自分で買えます。誰にも邪魔されたり煩わされたりしないで、僕も裁判所を煩わせずに。
判事   治療も続けなければいけませんよ。
ヌオーリ もちろんです。
判事   いいですよ。あなたがこれまでしてきたことを繰り返すことはしませんが、あなたの調書はとても分厚いんです。何年にも渡りますから。
ヌオーリ 仕事がなかったからです。仕事をしていなかったから。僕は
判事   そうですが、そのことはではなくて、あなたの過去を語るためにここにいるのではないから。
ヌオーリ お金が なかったんです。
判事   そうですね、なるほど。でもあなたは2008年に13回も女の人に切りかかって殺人未遂とされています。責任能力はないとされましたが、そういうわけで拘置所の後に精神科に強制入院となったわけですから。それは本当に重大な罪です。決して2度としてはいけないことですよ。もちろん、住民の安全のためにですが、あなた自身の益のためにもですよ。だからこそあなたのために、率直に言いますが、注意しているんです。先生もそのために。。
ヌオーリ でも、先生がすべてできるわけではありません。僕がいます。僕自身の秩序があります。法に従わなければならないのは僕です。フランスを尊重しなければならないのは僕です。オディアー先生がフランスを大切にするのではありません。薬を僕に投与する人がすべてを解決できるわけではありません。僕は落ち着く必要がありました。そして今日はとてもとても落ち着いています。AAH(障碍者手当, 月860ユーロ)。それがあれば頭をもっと理性的に働かせることができます。僕は病気になってしまったから。そのせいで誰かを脅したりしたんです。打ちのめされていたんです。住むアパートもなくて。本当にすっからかんだった。ホームレスだったんです。もうどうにもできなくなってぶち切れてしまったんです。
判事   そう、でもそこを言ってるんではなくて、リヨンの精神分析専門の先生が仰るように、ご自分でも病気があることはわかっていますね。
ヌオーリ ああ、でも誰でもいくらかそうですよ。
判事   まあ、いいでしょう。ラビー先生は「重度の妄想型統合失調」と言ってますから気を付けてくださいね。怖がらせるために言うのではありません。よい治療があれば平均的な人として暮らすことができますから。ただ、過去にあなたが出会った問題、犯した間違いが、あなたの病気と関係があって、それが今でも少しあなたには残っているということです。そのことも忘れてはいけませんよ。わかりましたね、ヌオーリさん。
ヌオーリ はい、はい、わかっています。
判事   では弁護士さんのご意見を伺いましょうか。
弁護士  一つ質問があります。質問を許可していただけますか ?  (ヌオーリに向かって)長いこと入院してきたけど、外の治療を受けてみる気はありますか ?
ヌオーリ 僕はその質問に答える前に、知りたいことがあります。なぜ僕らは病気になるのだろう ?
判事   あっ ! (口があいたまま)
ヌオーリ なぜ僕らはみんな統合失調という病気に苦しむんだろう ? それが知りたいんです。
判事   みんなではないでしょう。
ヌオーリ 僕は病気だなんて知らなかったんです。
判事   そのことでは誰もせめてはいないよ。
ヌオーリ 率直に言わせてもらいたいのですが、 僕が知りたいのは、もし治ったらみんな僕になんでも言いたい放題言うのを止めるんだろうか ? って言うのも僕はどちらにせよ弱者でもあるんです。ああそうだ、僕は成功するにはいろいろ困難があった。でもぼくがうまくいかなかったのはそのせいではないんです。大事なのはまだ能力もあって、尊重するべき義務があるということ。法に従わなくてはいけないということ。今なら僕は法律が何なのかを知ってます。何をしなければならないのかが分かります。自分の意識や行動に気づいているし、だからもう二度としません。なぜならこれが僕にくれた最後のチャンスだから。それをしっかり生かさなければいけないんです。それだけです。
判事   その通りです。弁護士さん、どうぞ。
弁護士  ありがとうございます、判事さん。彼の状況に関して診断書で気になるのは二次的な条件と思われる状況や動機についてです。大事なのは今日を確認することであって、刃物で切りつけたとされる8年前ではありません。その事実は彼も否定していませんし、今日の事実を確認すること、現在、彼が今でも人々の安全を危うくする人なのか、公衆に危害を加える可能性があるのかです。簡潔に申しますと、ひとつ考慮に入れていただきたいことがあります。ジュリーという彼の友人がAHHの入居人として社会的住宅を提供してもいいと言ってくれていて、見守ることができるとおっしゃっているんです。私からは以上です。
判事   わかりました。確かに、診断書はあまり詳しく書かれてはいませんね。しかし、ヌオーリさんの調書はとても分厚いので、膨大な過去がありますからね。まじめに理性的な決断を要します。ですから、本日午後、審議の上で決定します。午後には答えがわかりますから。さて、以上です、ヌオーリさん。


No 8 ケバーブ 女性 , 判事 : 女性 40歳くらい, 弁護士女性40歳くらい
判事   誕生日は1995年5月12日、間違いないですね。
ケバーブ はい。
判事   20歳と少し。
ケバーブ 21です。
判事   そうですね。先日11月25日に第三者の要請により入院してますね。。自殺念慮によりとあります。診断書によればあなたはリストカットを試みた、と。
ケバーブ 手足をもぎとられたんです。
判事   静脈を切ったでしょ。あなたは霊的幻覚と被害妄想を伴うせん妄状態で。。それと8月から治療を中断してますね。
ケバーブ っていうか、自殺未遂はしていません。リストカットのふりをしたんです、レイプされたんで。その子のエネルギーを感じるくらいなら、傷つける方がよかったから。その子のエネルギーを自分の中に感じるくらいなら。。
判事   つまり、あなたは逆に自分がそんなことされるくらいなら自殺してしまおうと。。 11月の終わり頃ですね。それが原因でここに入院したと書いてありますから、入院は正当化されますね。
ケバーブ わかりました。
判事   また自殺を試みる恐れがあるので、それもこんどこそ決定的な形でと。
ケバーブ なるほど。
判事   ところで8月から治療を中断してますが、何か理由がありますか ?
ケバーブ ある女の子が私にテレパシーを送って、脅して何もできないようにしているのです。それで私、病院にも行けないし何もできないんです。
判事   一人暮らしなの ?
ケバーブ いえ、母と。
判事   お母さんのところに住んでるのね。仕事は何ですか ?
ケバーブ ケバブ屋に仕事を見つけたんです。だからケバーブを売ります。
判事   そこで働いてたの ? 入院させられた時?
ケバーブ いいえ、まだバイトは見つかっていませんでした。で、その後、ケバーブに行って頼むと「採用しよう、履歴書もってきて」と言われました。
判事   なるほど。それであなたは今日ここで何のために面談しているかは理解しているのですね。手続き過程の正当性が確認できたら、入院の延長をするかどうかを決めます。
ケバーブ わかりました。でも自殺の心配というのはばかげてると思います。私、自殺しようなんて思ったことはないから。だから私が自殺しようとしたというのはうそです。自殺したいなんて全然思ってなかったから。
判事   でも静脈をきったでしよう。
ケバーブ いいえ、わたしはちょっと。。あれは血管のところじゃなくて、ここです。レイプされたので別のことを考えてやったんです、本当に。
判事   その前にもあったの ?
ケバーブ その2日前です。彼はしつこくやり続けました。車の中、私のうち。。
判事   本当 ?
ケバーブ 男友達です。本当の名前は知らないけどユップって呼んでます。4回以上レイプされました。だいたいです。その後別の男に3回、また別の男に2回、全部で8回。だから私我慢の限界でガラスの破片で。。あなた聞いたことあるかどうかわからないけど、レイプされた子がガソリン被って焼け死んだ話。
判事   誰 ?
ケバーブ 女の子。ニュースで聴いたの。いつだったか忘れたけど。
判事   わかったわ。では弁護士さん、何かご意見ありますか ?
ケバーブ いいえ。あっ、すみません。
弁護士  簡潔に、判事さん。状態は快方に向かっています。私ではなく医師がそう言っているのですが。それがポジティブな第一点、健康か回復していることです。それから先ほど聞いたところでは今度の木曜日にお母さんと面会があるそうです。もしかすれば通院の可能性も。だから今日のところできることは、健康状態もよくなってきたことだし、(ケバーブに向かって) まだ完全じゃないから先生たちももう少し入院してた方がいいって言ってるからね。
ケバーブ わかりました。
弁護士  いい ? (ケバーブに) 内容形式共に他に所見はありません。(判事に)
判事   まさに全体的によくなっているところだから。まだぶり返す危険もあるし、またややこしいことになってもいけないからね。退院できるまでもう少しここで治療してた方がいいわね。
ケバーブ わかりました。いいです。
判事   いいですね。
ケバーブ 結構です。



No 9  シャピス 男性 39 歳 , 判事 : 女性 40歳くらい, 弁護士女性40歳くらい
判事   あなたはシャピス フロリアンさんですね。
シャピス はい。
判事   1977年12月25日生まれですね。
シャピス そうです。
判事   あなたは犯罪を犯したために少し前から国家の要請により強制入院となりましたね、そう理解しています。そのため2014年にヴィナティエ病院の困難者施設UMD(日本での医療監察に当たる ?) に移されたんですね。
シャピス そうです。
判事   あなたの臨床状態が変わらず留まったまま、懸念される状態であるとする診断書が多いのですが。
シャピス 懸念の度合いはどのくらいですか ? まず詳しく知りたいのはそれです。(貧乏ゆすり)
判事   直近のを見てみますね。いいですか、それによるとこの数週間あなたの状態は大変悪化している、と言っています。
シャピス いつからですか ?
判事   この診断書は11月21日付けだから11月のことかしらね。自分では悪くなっていると感じていますか ?
シャピス いいえ、感じていませんけど。
判事   特にそうは感じませんか ? 酷い妄想に憑りつかれている、ってことはないですか ?
シャピス 私はその.... 私にして頂いてる治療はとてもうまくいっているので皆満足してますよ。だからその悪化しているというのはよく理解できませんね。実際のところ。
判事   と言うのは ?
シャピス あんまり論理的じゃありませんね。
判事   その先生が言うにはあなたはより孤立する傾向にあり、コミュニケーションがとり難くなっていると。
シャピス 私としては、いわば私を忘れているのは彼らの方ではないかと。彼らを忘れているのは私ではないです。私の場合、それは彼らの方です。私のことは横に置いているんです。私はもう3年もブロン病院にいることはお気づきですか ? それなのにカフェテリアに行くことができたのはたったの3回です。毎週外出ができるのにも拘わらず、3年で3回。だから、私に手綱をつけているみたいです。私としては、彼らの方が私を少し忘れているんではないかと…わかりませんが…刑務所の中で
判事   何と ?
シャピス わかりませんが。ブロン病院では。よく理解できません。刑務所に戻りたいです。
判事   刑務所に戻った方がいいのですか ?
シャピス ええ、ええ。
判事   前回の面談ではおっしゃらなかったことですね。
シャピス 審査がおわってから、みんなが言ったんです。君は刑務所に行けるよ。って。精神医学的になんの問題もないって。なのに考えてみたらまだ自分は病院にいて。。
判事   それこそあなたの問題かと思います。いいですか。
シャピス でも、どんな問題 ?
判事   あなたの混乱に関する意識の問題よ。
シャピス 混乱、それは。。(唇をかむ)
判事   あなたの気持ちは ? ここにまだいたいですか、いたくないですか ?
シャピス 私には、恩寵をうけた父がいます。
判事   ああ、「恩寵を受けた父がいます。」と。(書記に)
シャピス 彼は法律が怖いのです。だからあなたに会いには来ません。彼がもし私をここから出すために私に会いにきたら、あなたは彼を誘い出すことができた最初の判事さんになりますよ。これから政治団体を作るんです。広報係を確保してあります。もしもっと情報が欲しければオリヴィエブザンス・ブザンスノに連絡してみてください。私は混乱してないし、私の頭も混乱してないことは彼が説明してくれます。私の頭は混乱していません。父は法律が怖いのです。ですからあなたに言いたいですね、私の父を呼び出して少し法律と仲良くして私を刑務所から出すことができた最初の人になってください。全く。
判事   あなたは刑務所にいるんじゃないでしょ。あなたは治療のために病院にいるんですよ。
シャピス ええ。
判事   大きな違いです。
シャピス ええ、ええ。(唇をかむ)
判事   では弁護士さん、この状態に関して何か所見はありますか ?
弁護士  特に所見はありません。診断書を先ほど拝見して少し理解したところがあります。私にとって重要に思えるのは、介護士の方と問題があったためにここに移されたということです。その点で介護士の人たちに聞いて回ったところでは、みなと仲良くやっているということでした。困難者棟UMDでは好きなところに出向くことができません。その点については違う介護士の人たちとうまくいってると見ます。
シャピス みんなうまくいってますよ。
弁護士  ここはそんなに嫌な感じがしてないよね。(シャビスに)
シャビス 私の将来が遠くなる以外は。時間がなくなってしまう。やりたいことが沢山あるのに。
判事   でも優先しなくてはいけないのはあなたの治療ですね。いろいろやる前に。
シャピス ええ、わかりますけど。でもいつまでですか ? 何歳まで ?
判事   いまのところ先生方もまだいつとは言えないんです。私は医者じゃないからなおさらですけどね。
弁護士  それが治療に関しての問題点です。
シャピス じゃあ、あなたは何の役に立ってるんですか ? (弁護士に)
判事   おっしゃるとおりです。
シャピス ええ、ええ、へへ。
判事   私は法律の要請に従い確認します。私は診断書に従い判断します。私は医者ではないので、病気の診断は行いません。その代わりあなたがここにいる必要が十分立証されたかを確認し判断します。あなたは刑務所にいるんじゃないでしょ。あなたは治療のために病院にいるんですよ。
シャピス いいえ、私の政治的政党において、精神科医というものを廃止したいと思います。
判事   ああ、でも彼らはあなたを支えるためにいるのよ。シャビスさん。
シャピス いいえ、違います。
判事   好きで皆を精神病院に入院させてるわけではないと思いますけど。
シャピス ええ、ええ、わかります。
判事   必要だからです。
シャピス ええ、ええ。彼らにはわかるでしょう。彼らには私には支持者がいるとわかるでしょう。
判事   診断書をみたところでは今すぐに退院させるに価する理由がみつかりません。まだ不可欠に見えますが。
シャピス もし、父に確認をとってもらえればそれが証明できます。合わせて法律も。
判事   お父さん、どこにいるの ?
シャピス オート・サボアのうちにいます。彼はうちに帰って怖がっています。どうしたらいいか分からず、何を言ったらいいか分からず、法の前にどう釈明したらいいか分からず、私をどう愛したらいいか分からず、どうすれば私に会えるのか分からず、どうすればいいのか分からず・・私と一緒に何かしたいと思っています。私の欄に私は三位一体であると特記しておいてください。父は12月の7日生まれ、母は59年の7月7日、私は57年の12月25日が誕生日です。ですから私は三位一体のひとりです。それが政治的な団体を立ち上げた理由です。そういうわけで私には広報係がついています。
判事   そうですか。それでは行ってもいいですよ。我々もいいでしょう。
シャピス ありがとうございます、判事さん。よいクリスマスと新年を。
判事   あなたもね。さようなら。弁護士さん、ちょっと待って。これはあなたに。
弁護士  ありがとうございます。
判事   ちょっとお耳に入れておきたいことが。彼はお父さんを殺したの。
弁護士  そうですか。(淡々と書類を整理しながら)
判事   で、10年の禁固刑を受けたの。



No 10 ソフィア 女性 , 判事 : 女性 60歳くらい, 弁護士女性50歳くらい
判事   はいでは、あなたはソフィア ベニマードさんですね。
ソフィア そのとおりです。
判事   結構です。で、今日私があなたにお会いしているのは、強制入院された場合に12日以内にすることになっている緊急措置入院の法的手続きのためです。
ソフィア はい。
判事   今日の私の役割は医師や医療関係の方の手続きが、法に基づいてあなたのためになるように行われたかを確認することです。私も弁護士さんもあなたの利益を守るためにここにいますよ。
ソフィア わかりました。
判事   どうお考えになりますか ?
ソフィア まず、弁護士さんからお話を聞いてください。その後に私の考えを述べます。
判事   その方がいいですか ?
ソフィア はい。
判事   もし、あなたがそうしたいとおっしゃるならば、そういう順番にしましょうか。あなたのお考えも知ることも大変参考になりますから。
ソフィア それで結構です。
弁護士  彼女と話したところをお話しします。彼女はこの入院を継続することに同意ではありません。12月4日に入院させられることになったのは、それがクリスマス週間の始まりだからだと彼女は考えています。クリスマスが近づいてくる頃は彼女にとってはとても辛い時期なのです。というのは、まだとても小さかった頃に母親と引き離された時期にあたり、幼児期の辛さが蘇ってくるというのです。彼女自身も同じように2歳になる幼い娘と別々に暮らすことになりました。
ソフィア 今年は15時間でした。
弁護士  間接的な訪問ができます。随分と辛いことだと思います。彼女自身は臨床心理士との作業の方が薬物療法中心の精神科病院での治療よりも効果的だと考えています。薬のうちには効いているものもあると感じているようですが、それ以上に心理療法による治療の恩恵の方が大きいだろうと。彼女が退院を希望する理由はそういった点になります。
判事   結構です。ありがとうございます。ではあなたの番です。どうぞ。?
ソフィア 彼女は全て語ってくれました。全て説明しました。ですから、私はこの入院について自分が感じていることを述べます。入院は私には必要ありません。なぜなら私は自分の子供を取り戻すための解決にもならず閉じ込められているように感じるからです。私の娘も引き離されてはとても辛いはずです。私も同じです。精神科医は私が自分の苦しみを和らげるために娘が必要なのだと思っていますが、それは違います。互いに愛したいし、お互い毎日会いたいと思っているのです。私は自分の子どもを毎日面倒をみて教育したいのです。でも、入院していてはそれは不可能です。ですから、唯一の解決策は私がこれ以上入院を続けず、心理療法家の治療だけを続けること、薬も今では一種類になってますし、彼らは薬が私には有効ではないことを知っているんです。
判事   いいでしょう。では、私はあなたに説明しなければなりませんね。診断書によるとあなたはまだ入院が必要で、退院にはまだ早いと。もう少し辛抱が必要だと。あなたの娘さんはあなたが必要です。それは間違いありません。あなたもお子さんが必要です。でも娘さんは状態のいいお母さんが必要です。
ソフィア わかりますけど、それは問題ではありません。私は彼女に会えないことは知っていますが、私には彼女に会う能力はあります。それが益にかなうことだからです。ソーシャルフーカーは私が娘に会うために了解してくれています。入院していても、彼女は私が娘に会うことに賛成です。反対しているのは精神科医の方です。
判事   それが今のところあなたの益にかなうからではないかしら。
ソフィア ソーシャルワーカーは私たちの過去をご存知です。彼女は私の子供時代のことも知っています。国の披後見人になったのでローン地方の全ての児童自立支援施設は私の歴史を知っています。私はDdassの子供になって、つまり精神科医はそのことを知りません。ソーシャルワーカーが知っている全てのことを。
判事   では、ソーシャルワーカーの方は家庭の事情をよくご存じでもちろんあなたの娘さんのこともご存じなのですね。ここの精神科医はあなたに会って病気のことを専門に見るのです。それで、今のところあなたとあなたの娘さんのために、それはできないと仰っているの。
ソフィア でも私はできると思います。その能力があると思います。
判事   聴きましょうか。
ソフィア 私は毎日継続的に娘の面倒を見ることはできません。一年中面倒をみることができないこと、それはわかっています。でも娘の訪問のときには彼女を迎えて面倒を見ることができます。ご飯をたべさせ、おむつを替えて、心地よくしていられるように、満足して幸せを感じられるように、愛情をこめて世話してあげること、それならできます。それは本当です。それは約束です。誓いです。神の前にそう約束すると誓います。洗礼を受けてはいませんが、私は信心深いのです。ですから、あなたの名誉にかけて私は誓います。
判事   いいでしょう。そこまでにして、今度は私の決定をお話ししますね。
ソフィア はい。
判事   私は12日目の診断書の入院継続を承認しようと思います。ということは、私はあなたの言い分をすべて聞いた上でということです。この決定はよくないと考え、決定に不服がある場合には再審請求ができるということを覚えておいてください。これをあなたに。はい、終りました。
ソフィア ありがとうごさいます。
判事   みんなあなたが大変だってことはわかってるわよ。
ソフィア 分かりました。でももちろん再審請求します。
判事   そうしたければ、問題はありません。請求してください。
ソフィア ありがとうございます。
判事   さようなら。頑張ってね。
ソフィア ありがとうございます。さようなら。あなたによい1日を。
判事   ありがとう。


追記 ボルドー病院の責任者のお話ではこの制度により2割の人が退院できるようになりました。
詳しい資料が必要ならばインタビュー(通訳付き)をお送りします。
後日談で、この映画の場合は半数にあたる5人が間もなく釈放になったと監督がインタビュー番組で言っています。このインタビューはYoutubeに載っています。
こちらは2017年CRPA法施行状況報告書です。(調査提案する元精神科施設利用者の会でフランスの大阪人権センターのような存在))ので、健康社会学者のポーリンランターさんが作成したものです。グーグル翻訳で英語にすると読めるかと思います。
https://psychiatrie.crpa.asso.fr/2017-01-04-tjn-leg-Audition-du-CRPA-par-la-mission-parlementaire-d-evaluation-de-la-loi-du-27-septembre-2013-o-Temoignages?lang=fr



(4) 日本の精神医療審査会の現況
(フランスの制度を紹介するにあたり、日本の実情について知りたいと思い、大阪人権センターの有我さんから精神医療の人権擁護の実積、現況について資料を頂きました。2018年)
【精神医療審査会の審査結果】
①退院請求:入院又は処遇は不適当 3〜5%
②処遇改善請求:入院又は処遇は不適当 4〜8%
③医療保護入院の入院届:173,789件中(2014年)
  他の入院形態への移行が適当 4件 0.00%
  入院継続不要 4件 0.00%
④定期病状報告:93,041件中(2014年)
  他の入院形態への移行が適当 9件 0.00%
  入院継続不要 1件 0.00%
⑤請求受理から審査結果通知まで平均32日
⑥都道府県別精神医療審査会の構成2013年
各都道府県審査委員は10〜40人


保護入院および措置入院、医療監察における厚生労働省資料:
厚生労働省障害保健福祉部精神・障害保健課調べ
上記pdfダウンロードは https://goo.gl/tH4Hes


×

非ログインユーザーとして返信する