~~ 市民による地域精神保健 ~~ 

- 健康は権利 - (無断転載はお断りします) 中村佳世

ベルギーの精神保健改革、進捗状況


『施設から地域へ : ベルギーの精神保健ケア改革』

ベルナルド・ジェイコプ :  

(ベルギー精神保健改革国家プロジェクトマネージャー)
 
WHO研究協力センター共催DIUリールII大学、パリ13大学、マルセイユ医療機関、大学間継続研修『地域精神保健』2020-2021


講座責任者

ジャン・リュック・ロラン

WHO研究協力センターCCOMS元センター長/リール市東保健センターEPSM局長地域精神保健責任者/精神科医



目次
はじめに
I 基本的理念と経緯 
II ネットワークと連携
III 政策的なコンテクスト
IV 協定 
質疑応答



はじめに
ジャン・リュック・ロラン :
次はベルナルド・ジェイコブさん、ベルギーの精神保健改革プロジェクトマネージャーです。昨日のエンマ・ミトルストンさん同様、彼はこの大学間ディプロマ『地域精神保健』の第1期生として学び、ベルギーに地域精神保健を導入し改革を成功へと導きました。大変光栄に思うと同時にその仕事ぶりには感服しています。当初は半年もすれば投げ出すだろうと思っていましたが、プロジェクトは既に10年以上も続いており、改革はよい兆しを見せています。というわけで、どのようにしてベルギーの改革を成功へと導いたのか、ベルナルドが説明してくれます。フランスでも是非実現させたいと思っているのですが。ベルナルド、君の番だよ。12時半までですが、最後に少し討論と質問の時間も取りたいと思います。


ベルナルド・ジェイコプ
ありがとう、ジャン・リュック。
皆さんこんにちは。実は、私もこのフランス医療系大学間講座の第一期生でした。素晴らしい思い出とともに、実に多くのインスピレーションを受けたことを覚えています。そんなこともあって、べルギー改革担当責任者として今も、同僚たちや現場の人たちにこの講座の受講を推めているというわけです。この機会をお借りして改めて皆さんにご挨拶申し上げます。
それから、ここに参加している4名の同僚たちには、お礼を申し上げたいと思います。彼らは真の専門家と言えます。このような人たちと毎日一緒に楽しく仕事をさせて頂いて本当に幸せです。ベルギーの精神保健再編に必要な専門知識をもたらしてくれる彼らに、心から感謝を述べたいと思います。というのは、ジャン・リュックからも紹介がありましたように、これまで12年にも渡る改革の歩みがあったからです。それは単にリフォームというものではなく、今では精神医療的ケア以上のものとなっています。あるいは精神保健の『支援とケア』システムと言ってもいいと思います。精神保健ケアシステムの全面的な進化と言ってもよいものです。
それでは、現在のベルギーにおける精神保健ケアシステムに繋がる歩みを、これからご説明していこうと思います。



I 基本的理念と経緯


1 施設から地域へ : ベルギーの精神保健ケアシステム改革
私たちが改革を進める間に3つの政権がありました。重要なポイントだったと思えるのは、3つの別々の時期に3人の大臣が、私たちと同じ展望を分かち合って仕事に取り組み、このように推進することができたことです。現在は3番目の政権になりますが、3人目の大臣もまたビジョンと目的を共にしています。歴代の大臣とよい関係の中で取り組んできたケアシステム再編は、まもなく15年めを迎えます。
どうぞモーガンさん、スライドを進めてください。


2 2011 年当時の精神科病床数/100,000人


グラフ : 2011年当時のベッド数/100,000人
というわけで、これがその後に続く長い改革の始まりでした。これはジャン・リュックがWHOで講演するときに好んで用いていたグラフです。当時は10万人当たり150ものベッドを抱えていて、言ってみればベルギーは本当にできの悪い生徒でした。今では反省して、前ほど心配ではなくなりました。システムを進化させてベッドを減らしたのです。経験から、ベッド数というのはそれほど重要ではないと言えます。



3 2011 年当時の精神科病床数/100,000人


『病床』と呼んでいるものによって私たちが理解していること、病床の変容こそが重要と思われます。実際、病院自らが変容し、壁の外に出ていくようになると、病床という概念は全く重要ではなくなります。しかし、地域でのコミュニティケアへと完全に進化を遂げるために何よりも重要なのは、向き合い方の変化と文化の変化です。



4 歴史的背景と病院法107号


2001: 生活の場での利用者に軸を置くアプローチ (在宅ケア)
2002: これからの精神保健ケア政策に関する共同宣言(病院法第11条(9)および第107条(97))
2007: ケア会議計画 : 利用者と親族の参加、心理社会的復帰


私たちは今、全ての領域において改革を進めています。既に児童、強制入院患者や高齢者についても新たな施策を始めていますが、まずは成人の場合について振り返ってみることにしましょう。すでに2000年初頭から、在宅訪問看護と呼ばれる、利用者の生活の場でのケアに軸を移すという経験を積んでいたと言えます。
それと並んで非常に重要なのは、2007年のセラピープロジェクトと呼ばれるもので、それにより私たちはセラピープログラム、耳を傾けるということの真の意味を学ぶことになりました。つまり、利用者本人をケアシステムと考慮の中心に据えて、専門職の人たちがそれをサポートするべく配置されるということ、これは大変重要な要素でした。また、同時に全体系の構築と組織化、施策とケアシステムの再構築のために、利用者本人とその近親者の参加を求めたことも重要でした。と言うのは、それは正に彼ら自身の問題であり、彼らに関係することだからです。
それまでベルギーにおいてあまり進展していなかった点として大事なのは、心理社会的リカバリーという概念でした。つまり、人々の役割、社会参加、仕事を覚え社会復帰すること、価値ある社会的活動や趣味的な活動へのアクセスに関することなどです。今は我々の社会におけるそれらの人々の社会的な立場についても話すことができるでしょう。



5 国際的な経験
国際的な経験
入院期間の短縮
ケアの連続性(病院施設-日々の外来診療-社会的処方をつなぐ)
身近な場でのケア(生活圏内で)


この頃私たちは、一連の国際的な体験を積み重ねることに力を注いでいました。しかし、これらの体験がどんなによいものであっても、他の国の他の地域にそのまま導入することはできません。自分の国に適合させる必要がありますが、その時は、多くの国々を訪問しました。当然ながら初めは、リールで実現されたその取り組みを体験訪問したことを思い出します。その後スイス、イギリス、フランス、ドイツ、オランダ、そしてケベックに至るまで取り組みを訪ね歩きました。
これらのことは、最初から各保健局と共に行っていました。これも大変重要な要素です。政府の担当者自身が海外で起こっていることに興味を持っていたことです。まず第一に、入院期間を短くしたいと考えていましたが、同時にケアの連続性をとても重視していました。つまり、施設入院、外来診療、そして本人の生活している場での社会的処方とを繋ぐために、ケアの連続性に特に焦点を当て、次第に身近な場所へ、本人が生きる場、本人が生き活動する場、生活圏内へのアウトリーチへと焦点を移していったのです。
6 文化的な面での進化
文化的な進化
精神保健における社会的問題の表出 
利用者と親族の立場
『患者の権利』の出現
社会的役割の再評価、心理的社会復帰のコンセプト
市民社会と市民性の進化


その時までに数年をかけて文化的な進化を遂げていたことが指摘できるでしょう。利用者の地位という点でも、つまり、利用者の基本的な権利[2]という考え方の出現、利用者の心理社会的な存在価値の評価、そして、社会そのものにも進化があったと言えるでしょう。『市民権』という概念は、私たちの仕事を遂行するにあたり、考え方の基礎としてとても重要な概念のひとつです。



7 意思決定のプロセス
意思決定のプロセス
2009.9.28  公衆衛生大臣間協議、財政に関する病院法、107条施行 
2009.12.14 公衆衛生大臣間協議、行動とコミュニケーションに関する計画
ベルギーのことについて考える時に一つ理解しておいて欲しいことがあります。それは政治的な複雑さです。それについて深入りするつもりはありませんが、ベルギーには国の政治の他に、独立した地方毎の保健局があり、更にコミュニティ毎に精神保健の保健局担当があると言うことです。つまり、この仕事を遂行するのは8人の官僚と3つの言語圏、フランス語、オランダ語とドイツ語圏があるということです。
このようなやり方はとても興味深いと思われます。もちろん複雑ではありますが、現場のモデルケースとしてとても興味深いものでもあります。
「その複雑さはお互いの能力を補い合うものであり、私たちはそのためのコンセンサスという概念をもって働くことが可能なのだ。私たちはたとえ異なるレベルの機関にいても、『地域精神保健』、コミュニティアプローチという共通のビジョンを持って働くことができるのだ。」と。
今はコロナの最中ですが、そのような考えの元に常に2週間毎に、これらの異なる機関の間で公衆衛生の会議を続けています。どの機関にもそれぞれの役割がありますから、常に同じビジョンの中で合意形成をし、その仕組みが国レベル地方レベルにおいて共に推し進められなければなりません。地域精神保健への施策は、同じ目的を共有しつつ継続的な軌道の中で再構築されなければならないのです。
つまりこれが、これらの打合せにおける意思決定のプロセスなのです。



8 病院法に関する条文107号
『特定の取引条件のための財源を用意し、ケアの循環とネットワークのために、一定期間の実証的実験に基礎をおき、それらのプログラムを軸とした財源に充てることができる。』


さて、私たちはこの107号法について多くの議論を交わしました。107-G改革とまで呼ばれたものです。107号法というのは病院に関する条文を定めたもので、その当時経験ベースで行われていた従来とは異なる技法を、公式に導入するための様々な条項を定めるものでした。
正にこの法律によって「さて、こんな法律は未だかつて実施されたことはなかったぞ。この法律を活用して、病院に閉じろとも病床を失くせとも言わずに、少しずつ旧来の仕組みの一部である『病床』と呼んでいるものを変革し、違う形のネットワークを、より地域に根差したケアを、とりわけ医療的ケアの全てのプロセスに気を配りつつ、他の社会的プロセスのネットワークに徐々に組み込んでいこう!」と言えるようになり、私たちの仕事は進んだのです。



9  プルーガイド
2010.4.26, 公衆衛生についての保健大臣間協議、モデルの定義 -> ガイド

https://gigi.muragon.com/entry/160.html


私たちは全ての関係機関と知恵を出し合い、共有すべきある種の戦略的なプランを作成しました。(活発に踊る人が描かれたロゴが見えると思いますが、独自の組織を有するブリュッセル、ワロン地域圏、フランドル地域圏とドイツ語コミュニティなど異なる地域のロゴが、連邦当局のロゴと並んで描かれています。)
戦略的プランのすべてが、2010年に一つの共通モデルとして『ガイド』と呼ばれる冊子に集約されました。今ではすっかりお馴染みとなって私たちの間で小さな青本と呼ばれています。この冊子には、財政面での再編やケアの再編、一人ひとりの研修と位置づけなどについて書かれています。それは全ての関係者を含む最低限の戦略的な計画書であり、私たちが進めようとしている共通の目的と方法を定めるものであることを、誰もが認識しているからです。
こうしてついに2010年4月26日、107リフォームと呼ばれる病院に関する条文により定められた成人のための精神保健ケア改革が始まったのです。


10 グローバルアプローチと統合
この改革は『グローバルアプローチ(包括的な参加)と統合』という概念に基づいて行われていますので、始めるにあたりまず、この『グローバルアプローチと統合』とは何か、を理解しておく必要があります。これはとても興味深いビジョンなので、私たちが行っていることの基礎には今でも常にこのビジョン、『グローバルアプローチと統合』があります。
それは、ある人にリカバリーと社会復帰が必要な時に、精神保健というのは資源の一部分でしかないという意味です。言い換えれば、政策として全ての分野を整合的に包括し、しかもそれぞれが呼応し合うような統合的なケアモデルを提示しなければならない、と言えます。つまり、その人がリカバリーするのに必要なあらゆる関係者と機関を考慮に入れるということです。



11 グローバルで統合的な政策の定義と目的
『一つの政策の中で、各々の分野の活動が均等に呼応するように、
全ての分野を一つの政策に整合的に組み込むこと』
私たちは、どのようなモデルを導入すればいいだろうかと自問しました。そして現場の関係者と共にそのモデルについて考えました。なぜなら、全ては日常的に各々の現場関係者により実践が必要となるからです。関係者というのは一般総合医、病院の責任者、当事者団体、労働組合、各地域の保健ケアの代表者、また政治家は言うまでもありません。
私たちは問いました。『それぞれの地域において、困難を抱えている人たちのニーズに応える支援を見つけるために、充分な資源を整えるにはどうしたらよいのだろう』と。


12 5つの活動分野
最初に注目したのは5つの活動分野です。大事なのは、5つのサービスではなく『5つの活動分野』で、正に活動分野です。
私たちは、誰一人忘れることなく、より広い意味で完全に一掃したかったのです。どれかひとつのサービスに焦点を当てるために他を軽んじる、ということはしたくありませんでした。むしろ完全なモデルを実現するためには、ある地域に活動分野が5つ全て揃っていることが必要だ、と考えました。
では最初に、これらの5つの活動分野について定義しておきましょう。


13  活動分野1 プライマリーケア
1) プライマリーケア= 精神保健の予防に関する活動、早期発見、検査と診断の確立


まず、一つ目は精神保健ケアの予防と啓蒙活動、早期発見、発見および診断に関する活動です。
振り向いて見るとそこには、ご存じのような各種精神保健サービスや各種診療所、児童のためのセンターや一般総合医その他によって、一連の自律的に資金が運用されている取組み、精神保健サービス、プロジェクトがあることに気づきました。
これらは全て精神保健のプライマリーケアに関わるもので、改革当初のプライマリーケアと専門的なケアの最前線にあったと言えます。この分野の仕事は数年でとても進化したことがご覧頂けると思います。というわけで、それが第一番目の活動分野になります。


14  活動分野2) : 社会的包摂、インクルージョン
2) 社会的包摂、インクルージョン
社会復帰と社会的包摂のために働くチーム
インクルージョン(社会的包摂)


二番目の分野は、目的、ビジョンとして、社会参加と社会復帰、社会的包摂に携わる全てのチームやプロジェクトに関するものです。
知っておいて頂きたいのは、ベルギーには以前から再適応を目的とした施策、すなわち心理社会的再適応センターと、それを目的とするミッションに特化した社会福祉士、という制度があったことです。しかし、この分野にはその他にも沢山の領域があります。例えばジョブコーチング、趣味活動、フランスではGEM相互支援グループと呼ばれている精神保健サービス利用者のための自助的社会的活動、などがあります。
というわけで、二番目の分野は社会的包摂です。


15  活動分野3) : 集中ケアのための急性期病棟
3)慢性疾患向けではなく、急性期の精神保健問題に応える、施設入院が不可避の場合の集中ケア


3番目の分野は病院です。
病院を完全閉鎖することに力を注いだ事例や国々を分析した結果、私たちはそれに対してはノーと結論し、総合病院の精神科と精神科病院を残すことにしました。むしろ少しずつ彼らのミッションを見直し、慣れ親しんだ病院文化、仕事習慣を一新し、病院を再編してより統合的なものへと進化させることにしたのです。



16 活動分野4 : 住宅
4) 自宅でのケアが無理な場合にも、在宅ケア計画が必要な場合にはケアの組み立てができるような、代わりの特設住宅の形成


4番目のタイプの活動です。地域コミュニティへのアウトリーチを模索する時に、地域に溶け込むためには住宅の確保は重要なポイントです。
当初から文面は変わっていませんが、テキストを読み返してみると、『自宅での介護、療養計画を立てるのが困難なときでも、特別に設けられたケア住宅があればケアが可能になる。』とあります。しかし今では、その文言を書かなくてもよいほどになりました。というのは、今では、もっと先まで達成しているからです。
実際、ベルギーの様々な地域で様々なタイプの住宅が見られます。フランスで言うところのコミューン、地域においても住宅政策が行われています。また、単なる療養型からは既に脱し、今ではあらゆるタイプの住宅にプロジェクトを拡げようとしています。もちろん住宅問題は地域精神保健のアキレス腱であることは間違いありません。住宅を見つけるのが難しいことに変わりはないからです。



17 活動分野5 : モバイルチーム
5) : モバイルチーム
クライシス時の集中ケアに対応する急性期モバイルチームと外来チーム
長期に渡りケアを必要とする利用者のためのモバイルチームと外来チーム


5番目の活動分野は、107号法を運用した結果として得られるものです。先ほどお話した『地域内の住宅を部分的に改変した住宅提供の可能性』を思い出して頂けるでしょうか。
私たちが行ったのは、精神科病床に関する法律を改変することによって、精神科病床を、二種類の動きまわる移動チームに変換しました。ひとつは急性期に備えた集中ケアチームで、ここでは全てを定義することはしませんが、必要ならばまた後ほどいたしましょう。つまり、急性期の短い期間を担当し、在宅時のクライシスを減らすために介入するチームです。一度、二度、と言わず必要とあれば三度でも訪問して、生活領域から出なくて済むようにするためです。
もう一つは、長期に渡るケアを必要とする比較的安定した人たち、ケア住宅も入院も必要のない人たちをサポートするために動きまわるモバイルチームです。彼らはわずかに自律が欠けているのみで、この動きまわる移動チームはネットワークの他の機関と協力することによって、入院を回避し自宅で暮らしながら社会活動ができるようにサポートします。
というわけで、これらの移動チームは正に、病院に関する107号法を運用した結果実現する部分となります。
ですから最初は『ある地域に、補足的かつ充分となるように活動を補い合って、最小の条件を確実に満たし、あえて最小と言いたいのですが、活動とサービスの最小単位を整備する』という考えを前に進めたわけです。





II ネットワーク


18 ネットワークの構築
▶ 機能的ネットワークの構築
ネットワークコーディネーター
戦略的なプラン
▶ 地域毎の応用設定
▶ ケアと支援資源、専門職の包括 (活動分野5つ全てを揃える)


そんなところから始めてまずベルギー全体を領域に分け、各地区ごとにネットワークと呼ぶものを構築しました。それはフランスにおける精神保健セクター[1]とは全く関係ないものです。ベルギーには、行政地域ごとに分かれたそれぞれの行政があり、それまで既に何年も一緒に働いてきた各々の関係機関があります。私たちはそれについては手をつけずに、地域という考えを基にして彼らと共に仕事をすることができました。つまり、既によく機能している機関をネットワークとして再編したのです。それを私たちはネットワークと呼んでいますが、正に実践的なものです。つまり、都会か田舎かなどその地域の実情が反映されたもので、お話しした5つの活動分野を最小限完備した、社会資源の総和のことです。
そして、ネットワークコーディネーターと呼ぶものを組織しました。彼らは地域の組織の中である程度自律性を持った人たちで、地域を組織する力を持ちます。しかし、彼らが持ち込むアイデアは時に地域の実情に合わない可能性もあるため、サービスの内部には干渉せず、むしろ地域にあるサービスを資源として人々の期待に応えうるよう、より包括的なネットワークを構築していくという役割を担っています。



19 利用者の周囲にネットワークを構築する
▶ 利用者の必要に応える社会的支援とケア資源の運用
▶ 共通の道具 (一人ひとりに応えうるサービスプラン) 
▶ 利用者による自由な選択
そういうわけで、私たちの戦略的な計画についてお話ししたいと思います。
戦略的計画、過程、コンセンサスなどの言葉は、精神保健や精神医療の分野ではあまり使われない用語ですが、まず不可欠なこととして、『水平な考え』というものを理解する必要がありました。ネットワークの中心は病院ではなく、精神保健サービスでもなく、社会復帰施設でもなく、それは人々の必要に応じて機能するサービスの総和なのです。それは都会か田舎かを問わず、そこにある資源を利用して、人々の必要に応えるための戦略です。
この考えはとても大切なもので、フランスで行われている地理的セクター区分制度とは全く異なる考えだと思います。[2]
また、ある国々で見られるのとは反対に、ベルギーの精神保健改革は国全体の計画、ベルギーの全ての地域の全ての住民をカバーするもので、点々と存在するプロジェクトではないわけです。当局によって一元化され、ネットワークコーディネーターが中央と現場とを行き来することにより、ネットワークをコーディネートする場はその施策に一貫性をもたらし、当局の勧めるプランが各地域に適用可能になるのです。



20 普通の生活を送るためのネットワーク
というわけで 空き家リフォームによる住宅提供
その上で この新たな住宅提供を、すでにある社会資源に組み込む (地域と医療社会的資源)


ですから、ネットワークが実際に機能し始めるのは、一人ひとりの必要に応じて、これらの現場にある資源が活用され始めたときです。その時こそネットワーク機能が成功したと言えます。つまり必要な時に必要な場所に必要な人がいるというシンプルなことなのです。
言うのは簡単ですが、私たちは自分の所の小さなサイロで働いているような習慣を持ち込みがちで、つまり『サービス毎に』という見方によって仕事をしがちです。それぞれは正にパートナー同士であって、共に研究を重ねた末に互いをよく知っているという特権的なパートナーです。しかし、それをさらに超えていくためには、それが前線にあるのか、大きな研究機関であるのか、小さなプロジェクトであるのかによらず、しっかり機能しなければなりません。なぜなら、私たちは大規模施設に対しても、施設という観点のみに焦点をあてることはなく、その他のサービスやプロジェクトのネットワークの一つとして、互いに補完的役割を果たすものとして組み込んでいく、というビジョンを大切にするからです。
言い換えると、人々のプロジェクトや必要性によって、適切な時に適切な資源、適切な人をクリニックや個人のレベルに配置するということです。柔軟なケア過程モデルに立ち返るならば、それは信頼の上に、専門家の共通認識の上に築かれるもので、「私はいいサービスを提供できます。全て私にお任せください。」ではないのです。
さて、社会問題にせよ、健康や精神保健の問題にせよ、人々の複雑に絡み合った問題の重荷を解く時に思いつくのは、専門家の間で能力を共有し、互いに補完的な機能を果たすというビジョンではないかと思います。
知っておいて頂きたいのは、ベルギーでは今でも南に住む人が、北のケア過程を利用することに何の問題もありません。ネットワークは閉じたネットワークではなく、むしろそれとは程遠いものです。ですからこの改革はとてもシンプルなものなのです。
私たちは、107号条文で、住宅提供問題の一部と動きまわるモバイルチームについて改革を進めました。これらは今ではベルギーのいたるところに存在し、今も更に強化しているところです。
そして、住宅供給における変革を、既にある地域資源ネットワークの中に統合的に組み込むことを通して、この地域という空間は豊かな創造のための空間なのだということがわかってきました。というのは、病院と比べて予算の配分が不充分な部分があっても、人々の全人的な必要性を考えるならばとてつもない創造力が働き、新たなビジョンが生まれるのです。つまり、私たちは、正に既にあるものの中から、新たな住宅提供をネットワークに盛り込むということに力を入れました。



21 利用者の生活の場で維持する
とは言えもっと
できる限り利用者自身の生活の場で維持する


しかし常に、人々ができる限り生活の場で維持できるようにという考えです。この考えは少し説明するに値するでしょう。
今でもそうなのですが、年々種々の問題に出会ったおかげでその都度少しずつ分かっていったのですが、ジャンリュックと彼のプロジェクトは、ただ病院や施設から人々を退院させるというだけの発想ではないと理解できるようになりました。より問題なのは、再入院を避けることです。これこそが私が学んだことなのです。
何年もかけて、病院と施設という概念の意味合いと向き合ってきたのはそういうわけです。施設の入り口を管理することや、よりよい仕組みを作ることはとても複雑な演習問題ですから、精神科病院だけを指さしてはいけない、それも私たちが理解するようになったことの一つです。
つまり病院の問題は、同時に他の精神保健サービス分野の問題であり、再適応の仕組みの問題でもあるということです。ある要請があった時にわれわれがよくやる間違いは、その要請を追い返してしまって、正しい場所に存在しているかどうかを問題にしようとしないことです。それは前線の問題であり、人の問題です。人々はそれぞれの必要に応じて線上を行ったり来たり、昇ったり下ったりします。人々は施設の内でも補足的な機能の中でも働きますが、施設自身のこと、施設側の要請に焦点を当てたビジョンを持つことがないのです。それはとても複雑なものです。



22 リカバリーを軸とした視点で
ですから、その軸となるのはリカバリーというビジョンだということを繰り返し申し上げたいと思います。そして、このビジョンを持つのは心理社会的な社会復帰に特化したサービスだけではなく、全ての関係者が、彼らの人生設計に応じて、社会復帰と社会的リハビリ過程の可能性を助けます。それはあらゆる瞬間においてそうあるべきもので、絶対に誰に対しても、社会復帰のチャンスはないだろうと、断言してはいけません。



23 ネットワーク


真ん中 : 利用者、仕組み、利用者、精神保健ケア 
プライマリーケア、社会生活、研修と就労、文化スポーツ趣味的生活、住宅 
(それぞれが5つの活動分野の機能に対応している。)
さて、この図をご覧ください。この図では利用者が真ん中に描かれていますが、囲まれてしまっているのでこの描き方はダメです。破棄しなければなりません。正しくは、利用者はこの図のいたるところにいるというイメージです。
1から5までの機能が描かれているのがわかると思います。さきほどお話した異なる5つの活動分野です。精神保健が利用者の社会復帰に寄与することは決してないとは言えない、と申し上げたいと思います。精神保健やそこに携わる専門職の人たち各々は、利用者を支援するサービスの仕組み全体から見れば一部でしかないでしょうけれど、それが、支援とケアについてより総合的にお話ししたいと思う理由です。
心の健康は健康全般と切り離して考えてはならないのです。昔はそうだったかもしれませんが、これからはそのような見方ではいけないと思います。せっかくの機会ですのであえて申しますが、精神保健に関わる役割は、どれもたった一人では全く不充分です。
5つの機能の内の一番目の機能、プライマリーケアに関わる社会資源の役割を思い出してみましょう。順に、社会復帰、病院、住宅、そして動きまわる医療チームと、精神保健に携わるどのひとりも忘れてはならないのです。
また他の人たちも必要です。就労という社会復帰をめざす人の近くに、同じビジョンを分かち合える就労研修支援者が見つからなかったらどうなるでしょうか。
同じことは、文化的な活動や住居探し、社会生活についても言えます。図の左側にプライマリーケアが見えますが、その当時目指したビジョンを一つの図の中に正しく描ききることはできません。
当初、精神医療関係者たちは即座に、「待って、我々こそ、精神的問題を抱えた人がどういうものであるのかを知っていて、すでに話し合いのテーブルについている。我々の間でこそ討論しなければならない問題なのではないか?」と言いました。
しかしステップを踏み年を経るにつれ私たちは、「それは違う。コミュニティの中で仕事をする時には、その個人を取り巻くコミュニティや社会生活、職場関係者や学校、教育機関、それらの関係者全てと私たちが共に話し合うことこそが不可欠なのではないか」と気づきました。すみません、私は精神科医ではありませんので。そのようにして行われた議論は、より水平の関係でよい均衡を保ち、より興味深い議論へと発展して、時には参加者の半分くらいしか理解できないほど生産的な内容となりました。
ここで言いたいのは人々の必要性についてですので、精神科医についてこれ以上は着目しないことにします。もちろん診断というものが存在しますし、精神病理学も大変重要です。しかし、私たちは疾患を持つ人々とその家族の必要とするところに、より重点を置いています。



24 世界保健機構による推奨モデル 


 
(サラさんの示した逆さモデル)
医療システムおよび精神保健サービスの改善 – OMS (2009)


【サービスの最適混合モデル】
低から高
高から低
1セルフケア
2インフォーマルなコミュニティケア
3プライマリケアを通じた精神保健サービス
4総合病院における精神科サービス  地域精神保健サービス
5精神科病院& 専門サービス
サービスの必要量



24 世界保健機関による推奨モデル 


それは文化的にも大きな変革です。時に全く新たな発見をする努力をし、伴に歩む必要がありました。それを少しお話したいと思います。
サービス機構のピラミッドはご存知かと思います。
私たちの以前の財政負担は多分、このピラミッド図の上の部分とあるいは中間的なところに集中していて、その他、図の下部への財政分担はずっと少ないものでした。ベルギーでは精神医療がこれらの構造の中でも超専門化されていて、その他の人々はとても低い地位にありましたので、そのことは常に頭にありました。それは連邦国レベル、そして地方、コミュニティ、現場など、レベルを問わずでした。
私たちは改革の最初から一貫して世界保健機構WHOの勧めに基礎をおいており、今では更にといった具合です。



25 文化的な変化は時間を要する


さてもちろん、それは文化の革新です。私たちが理解しているところでは、今またより複雑な段階にいるときも、やはり相変わらずそれは文化の変革の問題なのです。来し方を思い出せば、それはそれは時間を要するものでした。ジャン・リュックも言っていましたが、6ヵ月もすれば頓挫するだろうと。しかし、あれから12年になりますが、それでもまだ道半ばです。
しかし私は希望に満ちています、もう半分もきたのですから。でも、それにはとんでもない年月を要しました。抵抗というほどの抵抗はありませんでしたが、やはりいくらかは抵抗に遭いました。専門職や病院によるロビーイング、その途上であらゆる問題に少しずつ出合いました。当然、そこにはこの変化に伴う怖れがあるわけですから、それも見ていく必要があるのです。
このような経験ができたのは、数か月から半年以内に公立病院を閉じようとしたギリシャの精神保健改革の失敗を体験していたからです。
『明日から6ヵ月以内にあなたの病院は閉鎖になり、コミュニティモデルに変更します』と言われては、当然、30年も働いてきた専門職の人たちはある種平衡を失い、進むべき方向を失いました。
そんなことは絶対にしてはいけません。複雑なカーブを何度も切って進むためには、一人ひとりの専門職、利用者やその家族、のみならず地域コミュニティにしても、じっくり考えるための時間をとらなければならないのです。



26 継続研修とクロス研修


【研修】
国際的に行われる研修 
科学的調査チーム向けのクロス研修
地域の専門職向けのクロス研修


そして私たちはそれに伴い、連邦政府の大規模な予算を組んで、全ての専門職に対する継続研修を実施しました。ジャン・リュックもそれに参加して最初のプロジェクトの選択に関わってくれました。しかも彼は国際的な経験があり、かつ研修を提供できる人でした。
ですから、私たちはモバイルチームをリールに派遣してその取り組みを学ぶことができました。また彼らを招いてセミナーを開き、研修を行いました。また、ガバナンスについて大変具体的なプログラムを完備し、利用者の協力を得て、専門職向けにクロス研修を、科学研究チーム向けと、中でも地方における専門職向けに、行いました。
既にお話ししましたが、現場には当局が知らない、枠にはまらない豊かな創造性があります。枠内の人に対して十分効果的で筋の通った答えを返すためによく枠内の者同士で話し合いを終えがちですが、本来、枠から出ることこそ必要なのです。



27 利用者と親族からの助言、意見


さてお話した通り、利用者と親族の参加というのが、私たちにとって当初より大変重要な要素でした。それについて成功したと言えるでしょうか? 答えは明白、というわけではありません。もし、利用者と親族が話し合いの席についていれば、それは魅力的とは言えます。それだけでいいと言うならそれもいいでしょう。しかし、そこをもう一歩進めなければなりません。
成功したと言えるかどうかはわかりませんが、10年経ち、私たちが試みた成人の場合についてはすでにあらゆるレベルの組織に利用者が参加しています。私たちの改革に必要な多くの助言を提供して頂くために、これまで10年から15年にわたり、実に多くの予算を当事者会と家族会に充ててきました。
この投資はベルギーにおいては重要な投資で、助言内容により異なりますが、総額は300万ユーロ(3億円)以上になります。しかし私は、ここを迂回することはできないと思います。私たちのしたことは必要不可欠な過程と考え、実施したのです。なぜならばそれは外ならぬ彼らのためだからです。つまり、全てのレベルにおいて彼らの視点を考慮にいれる必要があるからなのです。



28 利用者とその周りの人たちの必要に応じたケアと支援を再編する


みなさんは精神保健の日に掲げられるこの標語をご存知でしょうか、『私たち抜きに私たちのことをきめないで』これは正に私たち自身に問う言葉です。『組織の中にいて、《私たち》のことを考慮にいれずに私たちは何かを行うことはできない。』と。



29 参加の度合い


メタレベル 教育機関の参加
研究機関の参加     マクロレベル 政策レベル
メゾレベル  ケアと支援サービス
ミクロレベル 個々人


私たちは正に、彼らとその周囲を取り巻く人々の必要性に応じるという観点から、考え方を再編成しました。それは簡単ではありません。参加するというミッションには、まずマクロなレベルで参加します。そして私たちは、彼らの助言を政策レベルで受け取ります。より困難なのは中間的なレベルでの参加、病院です。利用者たちの参加を受け入れることのできる病院を見つけるのは容易ではありません。もちろん、ミクロな個人レベルではその要素が彼らに直接関わることなのでよりやりやすいのですが。



30 参加の階段


知らされる 熟慮する 声を届ける フォーマルまたはインフォーマルな形で助言できる 意思決定 
反論する <-


みなさんがご存じの『参加の階段』について詳細には覚えていませんが、通常、情報をもらった後にはじっくり考えるための充分な時間が必要です。それが私の言い続けたことです。人々が同じテーブルについて顔を合わせるだけでは十分ではありません。まだやるべきことがあります。私たちはその助言を求めるために実によく働きました。
さて、私たちはこれから数か月間、効果的な参加という概念をよりローカルなレベルで発展させ、専門職の人たち、利用者、その家族、近しい人たち、あるべきところにその人たちの椅子があるというだけではなく、本当に参加できているかどうかという問いに向けて更に方向転換しようとしています。
彼らの声を届かせ、アドバイスし、決断し(これがピラミッドの頂点)、またそれに反駁するために。(彼らはすぐに反論を見つけることも解ってきました)。そして私たちは、この反論について非常に興味深い議論を重ねました。それは実に興味深いものでした。



31 エンパワメント


基礎となる哲学
『利用者の精神保健サービスの選択、決定、影響、コントロールに応じて喚起されるエンパワメントは、彼らの人生のイベントにおいて応用発揮される。』


それ以上のことはここでは申し上げませんが。このアクセスという概念については皆さんの方がその秘儀をよくご存じのことと思います。それは、選択であり影響力のある決定であり、彼らの生活の一つひとつの要素に影響を及ぼすコントロールになります。



32 共働


各保健局と政治
病院とケアサービス
専門職
利用者と親族
地域社会、市民たち


3つの段階に区切って仕事をしなければならないのはそのためです。それはミクロ、メゾ、マクロの3段階です。
もし、上からの決定が直接利用者の利益にかなうものでなければ、またその施策の要素が利用者や近親者からみて、相変わらず興味が湧かないようなものであれば、何の役にも立ちません。
そこは熟考すべきです。もし本当に、これらの5つの活動分野を同時に進めることができるならば、ケアの再編を進めることができます。しかし、上から力づくで推し進めようとするなら、成功のチャンスはありません。
たとえ現場の専門職が素晴らしいプロジェクトを掲げていたとしても、施設から支持されなければ成功のチャンスはありません。
利用者が自分たちだけで改革をしたとしても、標語だけでは、それは小さな隅っこの話で、改革のチャンスはありません。
もし、地域全体の精神保健について語らなければ、コミュニティがなければ、利用者により近い団体つまり市民団体がなければ、成功のチャンスはありません。
本当に一歩ずつ前進と後退を繰り返しつつ、全ての関係者をひとつのビジョンに組み込み、分かち合ってもらわなければならないのです。私たちはそうした障壁に何度あったので、時間をかけなければならないと思います。みんなが合意するためには、前を見ずに急いでダメージを残すよりも、何か非常に堅固なものをもった方がいいでしょう。




33 地理的行政区分


これはベルギー全域がカバーされるネットワークです。一つのネットワークは最小で30万人から120万人までで、少し異なるビジョンがあります。100万人以上を有する大都市のブリュッセルとアンヴェール、それと田舎ではありますが、南のルクセンブルクに隣接する地域には、120万人毎の大規模な領域区分を採用します。これらは、その現場に携わる人々自身によって構想されたネットワークです。
当初はより小さなネットワークが考えられていたのですが、私たちはそのネットワークの組織に投資するために、それを一つにまとめてもらえるようにお願いしました。小さなネットワークに多くの投資をするのはあまり好ましくないだろうと思えたからです。
その点について詳細を語るのはやめておきましょう。そこには資金を提供する機関があって、組織された現場があります。申し述べておきたいのは、どのネットワークも同等だということです。会議の席に着いてこの任務に携わっているのは主に、ここにいるマグダとミュリエルで、毎日日ごとに、よい組織、よい経過、よいネットワークを追求しています。
国レベル、地方レベル、コミュニティレベルの諸局が日常的にそれを追跡しています。こうして私たちは共に前進し私たちの施策を現場に採用し、また現場を施策に採用します。



34 地域の専門職間協働に向けて


さて、いまある段階に来ていますので、エス・ボーゲルの専門化に関することなので、それについてお話してもう少しこの点に注意を喚起しておきたいと思います。
私たちがネットワークに関して仕事をしてきたことはお気づきかと思います。仮に住民が30万人50万人の領域があったとすると、この考え方をそこに導入することができます。しかし、先ほど申しましたように、左側にプライマリーケアを表す小さな丸が見えたかと思いますが、それまであらゆる専門職と極小地域レベルで色々試してみましたがそこまでは成功しませんでした。多分ネットワークというビジョンが広過ぎたのでしょう。
ですから、今は、市民の日常生活の中のより現実的なビジョンに立ち返ってみています。いつものように、ここはよく理解して頂きたいところですが、それまでにあった仕組みを補うために新たに提供することにしたサービスについてご説明したいと思います。当時のモバイルチームのように、すでにある仕組みを補う人たちを配置し、新たな資源を携えて新たな何かを持ち込めるものは何かと言えば、それはプライマリーケア臨床心理士と専門的な心理士です。一般論ではありますが、これらはサラとモーガンの報告書の部分になります。私の同僚が頭を傾げるようであれば、私の理解不足かもしれませんので、この部分についてあまりよい語り手ではないかもしれません。



35 2009年のベルギー精神保健改革


▶文化的な進化
▶心理的諸問題の社会的な
▶利用者と親または親族の参加
▶病院による継続的なケアの提供
▶グローバルアプローチと統合
▶多職種連携と活動分野間の精神保健ネットワーク


というのが2009年に開始今日までやってきた改革になります。この改革は、当事者とその親族が参加するという点、また、病院側からのアウトリーチによる継続ケアという点で既に大きな文化的進化であり、多分野間協力による地域精神保健と説明できます。それはグローバルアプローチとネットワークへの統合という概念として進化したとも言えるでしょう。
コミュニティの産物でもある英国系のマグダがその頃使っていた次の図式が私は気に入っています。とてもよく表わしていると思います。私たちは常にWHOに忠実に従っています。


ケアの専門職         病院の専門職     とりの
地域サービス     地域救急サービス カウンセラー 産婦人科      メンタルヘルスの専門家
近道 速達   クイックアクセス               
歯科  地域精神グループ、学習会、活動、リハビリ
あなたの健康



III 政策的な変遷


36 政策的なコンテクスト
次に施策面における変遷に移りたいと思います。



37 政策的なコンテクスト



コロナ禍におけるベルギー人の精神保健『全ては自動的に解決されるわけではない』
ここ数か月の困難な状況は目に見えない日常的な心理的痛を生み、
明日にでも消えるといえないしすぐに消えるものではない。



コロナ禍/第二波による精神保健利用


アンケート Leger
コロナ禍開始以来のあなたのメンタルヘルスをどのように評価しますか ?
%は、よくないと非常によくないの合計
カナダの青少年 18-34歳
カナダ
ケベック
アメリカ
コロナ禍、第二波、18-34歳が最も精神的な影響を受けている


脳科学 精神医療と精神薬理学の雑誌
コロナウイルスのパンデミックに直面する医療従事者は、どんな精神的なリスクを負うだろうか ?


コロナ禍の問題はあらゆる場に影響を与えました。精神保健の重要性と精神保健の問題点を考慮にいれないことの危険性に誰もが気づくことと思います。必ずしも精神疾患のことばかりを意味するのではなく、一般の人々の精神保健のことを言っているのです。その問題を抱えたことのあるすべての国々が、そのことに気づいています。
最近、休暇中に、アテネでこの問題に関する重要なWHOのミーティングがありました。ベルギーでは 短期的には素早く対応できましたが、更に長期計画についてもお話ししたいと思います。短期計画同様、私たちは不安定な状態にある人たちと、高齢者にアウトリーチするモバイルチームに力を入れました。
これらが、あえて言うならば、常にその場で実践に移そうとする短期的で直接的な答えになります。


とりあえず児童精神医療にも力を入れましたが、とりわけ総合病院と児童精神医療との連携を強化しました。皆さんのところでも同じかと思いますが、学生向けに特化したサービスの提供を強化し、特に起業に失敗したり売上が減ったというような、独立系の人の不安に対応するための支援も別途強化しました。私たちは当初から、この種の人たちのための重点的な仕組みが必要と考え、自殺防止のためのプロジェクトを用意しました。しかし、私たちはこれからお話するもうひとつの考察、より長期のプロジェクトも深めてきました。



38 政策的なコンテクスト


『精神保健ケアの提供を強化するためのアプローチ、
特に、よりコロナ禍の影響を受けやすい脆弱な人たちのグループに』


精神保健改革は、プライマリーケアの専門職の協力により、市民生活を営む場での精神保健のケア提供を発展させるための方法を探るという新たな段階に入った。


2020年の11月に、コロナの問題に関連して当局は対応を迫られました。既に申しましたように、連邦国レベル、地域、コミュニティの全てのレベルと結びついた、当局と省庁間または議会での合意文書(議定書)がなければ何一つ実行することはできないのです。それは複雑だと申しましたが、それこそが一旦下された合意を強固にするということもあるのです。そんなわけで、彼らはパンデミックにより影響を受けた部分に、特別に多くの予算を配分するために、特に精神保健関連に必要なアプローチを整えなければならないと言うのです。そして、それは改革の新たな段階です。ゼロからではありませんが、再出発しそのプロセスを歩み続けます。残念ながらそれはしばしば、地域の変更、政策当局の変更、政策の変更ということになります。
おかげ様でこれを押し進めようという政権に恵まれ、私たちはプライマリーケアの人たちと協力して、生活の場で精神保健サービスを提供することを引き続き強化していくことができます。
それはまた、アドバイスをすることはできませんが、そのようなものは持っていないので、しかし、私たちの経験は常に全ての関係者と決めていくというものではあります。



39 政策的なコンテクスト 相互協定委員会TOC


相互協定委員会TOC


ここで、私たちに眠りこんでいることを許さないTOCと名付けられた横断的協議会を創設しました。(今それがサラとモーガンそして私の脳裏に共振を起こさせていることと思います。)
しかし、私たちは既に存在する、左から右へとダンスを踊る小人のロゴに代表されるプロジェクトを考慮することなしに新たな仕組みを創ることはできません。それは、成人の、児童の、国立病院の、相互保険の、もちろん当事者代表の、様々な当局の、行政の、そして国立障害研究所などの、全ての機関が関係する精神保健改革なのです。
そこで、相互保険に関してですが、というのは先ほど健康保険適用についてお話ししましたので、プライマリーケアと専門のクリニックの心理士への健康保険適用、そしてもちろん、臨床心理士連盟や児童矯正施設?も、なぜなら、どちらにせよ、他の専門職と仕組み上密接な関係があり、それらの専門職と結びつきがあるのは彼らなので、総合的なケアというこのビジョンを強化するのに役立つだろう人たちだということです。


40 政策的コンテクスト


司令合意原則
▶人生のステージによりニーズは変化する
▶生物心理学的モデル
▶様々なレベルにおいて異なる機能を提供する
▶地域において市民の圏内でのアクセス可能性
▶多職種間連携と職種間相互乗り入れによる協働的で統合的なサービス提供


1. 公衆衛生の視点
2. WHOモデルによるケアの最適組織
3. 4つの目的軸 
4. 多職種間連携と分野間協力
5. プライマリーケアでの臨床心理士を基軸とするプロジェクト


そういうわけでその時点で悟りました。「同じように繰り返していけばいいのだ、つまり、私たちは過去にあるものを照会することなく新たなものを創ることも、未来のビジョンを持つこともできない」と。
というわけで、生物心理社会的、アクセス可能、多職種間の協働と専門職間の横断性、を軸とするモデルの指導原則を採用しました。
これらは正に『精神保健的な観点』、公衆衛生な観点と言えます。それが重要であることを強調したいので、あえてこの言い回しを使うことにします。
私たちは常にWHOの基準に従い、それらの目的を共有してきました。私たちは本当に多職種間また分野間の協力という考え方をしています。ここにきて、既に実施されているプライマリーケアの心理士という、フランスでもとても熱い議論が交わされている概念、そのプロジェクトに資するものをと考えています。
科学的知見を基礎として、受益者及びその環境に対する配慮を示す、グループへの実践可能な早期介入と発見の仕組みを、さらに発展させるための努力がなされています。



41 公衆衛生的な視点からのメンタルヘルス


左枠) 公衆衛生的アプローチ
⑴  全ての人という視点
⑵  社会経済的な視点から見た患者
⑶  プライマリーケアでの予防への関心
⑷  人口比を考慮した中での個人
⑸  システム全体のコンテクストから見たサービス構成要素
⑹  ニーズを基礎とするオープンなサービス
⑺  チームワーク志向
⑻  ライフワークという長期な視点
⑼  対人口比から見たコスト効果


右枠) 個人的なアプローチ
⑴  一部の人々という視点
⑵  背景を無視しがち
⑶  予防よりもケアに重点をおく
⑷  個人的なレベルでの介入のみ
⑸  孤立した状態での個々のサービス要素
⑹  それぞれの年齢、疾患をカバーする保険に対応する適格性をベースにしたサービスへのアクセス
⑺  個人セラピー志向
⑻  短期的挿話的な視点
⑼  個人ベースでのコスト効果
科学的知識を基礎として、受益者及びその環境に対する配慮を示す実践可能なグループと早期介入と発見の仕組みをさらに発展させるための努力がなされている。


『公衆衛生の観点』の意味するところは何でしょうか。私たちはトムクロス等の研究を基礎としました。
左側が公衆衛生的な観点、右側はより古典的な個人的アプローチを示していることがわかると思います。
それらの違いはすぐにわかると思いますが、私たちは全ての人を対象としていると同時に、思い浮かべているのはむしろ特定の人たちの健康です。
社会経済的な文脈を用いれば私たちには利用者が見えてきますが、個人的なアプローチにおいては利用者は見えてきません。私たちは早期予防に関心があるのですが、個人的アプローチでは予防よりもケアに関心が置かれるでしょう。
新たなニーズに応じたアクセスもあるのです。一方には、診断、社会保障、保険、医療ユニット、エクゼクティブユニットという従来のアクセスがあります。
私たちはチームによる公共的アプローチが好ましいという立場です。対岸にあるのは個人的なむしろセラピーという立場です。公共的アプローチとは正にすべての人々をベースにしたグローバルなアプローチなのです。



42 WHO : 世界保健機構、精神医療の最適な組織化


目的 : メンタルヘルスに問題のある80%の人の必要に応える支援を受けられる
関係する各々の専門職の協働によって、各々の地域に合った適切で統合的なケアが提供される


多数派   問題と疾患
青から赤 中等度から重度へ
赤 TMG 機能3と5
茶 慢性的複合疾患 機能2 クライシスのEMモバイルチーム(2A),長期EMモバイルチーム(2B) 精神保健ケアサービス
オレンジ 中等度から重度の疾患 27%  現規定 PPL(プライマリーケアに携わる心理士)  
青 軽度から中等度の疾患 52% 現規定PPL (プライマリーケアに携わる心理士)


さて、そこまでで私たちが行ったことの重要性は、このピラミッドの上の部分の複雑な問題の絡みについては患者さんたちを交えて仕事をしたという点です。これだけでも悪くはなかったと思いますが、まだ下の部分についてあまり考慮に入れていませんでした。つまり、軽度、中等度、そして重症の場合の問題です。
ここでは全てを詳しくは申し上げられませんが、むしろ必要ならば、じっくり話せる条件が整った時に、サラとモーガンがこの部分の詳細をご説明できると思います。
さて、私たちの目的は、人々に向けたより本質的な新たなこのアウトリーチのサービスを提供し、それまで推し進め成功してきた他のサービスを止めるということです。
今、私たちはアウトリーチをより多くの人が利用できるようにしようとしています。併せて精神疾患のない人たちや、極めて軽い症状に悩む人についても考慮しなければなりません。すなわち予防と素早いアクセス、ケアをつなぐ機能という概念です。



43 政策的コンテクスト


統合的なケア
20,000人の領域(住民75,000人の領域に対するプライマリーケア) 大多数18+
多職種による方向づけのための支援カウンセリング
一般総合医  80%-20% FPPL 家庭医 PMS 産業医、在宅訪問看護、療養型住宅での訪問看護 

多職種による指示と方向づけのための連絡会議

専門心理士 20%-80% 精神保健での外来ケア 2b継続ケアチーム、社会復帰の規定、就労研修
住民150.000人の領域に、救急対応チーム


地域に根差した、アクセス可能な、多職種連携による、グローバルで統合的なWHOのアプローチを、プライマリーケアに採用することの目的は :
・ 一人ひとりのニーズに応えること
・ 異なる活動分野が、どの地域でも資源として調達できることを知ること
・ どの協力機関も等しく扱うこと
・ ケアの継続性を改善すること
・ 各地域と各コミュニティの行政的、地理的な事情を協議しコーディネートすること



少し前知識がないとその意味するところが解りにくいので、コロージュの図についてはあまり語らないことにします。
ここでは『プライマリーケア』と呼ばれる最前線の話に進ませて頂きます。それはケアに留まらない統合的なグローバルアプローチ、特に、地域でのアクセス可能性や多様なアプローチを意味します。これを見れば私たちのマクロな取り組みの中には、プライマリーケアや医療機関をグローバルに語るための要素が多く含まれることにお気づきになるでしょう。
ここではそれらを見定めます。より人々に身近なレベルのアクションを考慮に入れて、より小さな領域の片隅について語りましょう。そこに関係者たちが順次参入してきます。想定されるのは薬剤師、コミュニティなど、そして全てのケアと社会的支援、趣味などの活動、どれも大変重要です。ですから改めてそれらのニーズに応えようとしています。
健康の継続性も改善し、カウンセリングを推進し継続していきます。モデルになるのは全く同じものです。
しかしこの概念の下にもう一段階段を下りて、極小地域で真に地域に根差した取り組みをしようとしています。




IV 協約 



44 協約 : 財政的協約


(左から右へ)
ガイド 子どもと青少年のための精神保健の新たな政策に向けて
ガイド よりよい精神保健ケアに向けて、ケアネットワークとケア循環の実現により
WHO  メンタルヘルスのためのサービスの構成
概要  ベルギーでの成人のための精神保健ケアの構成


私たちのガイドは当初より何も変わっていないことにお気づきになるでしょう。常に同じビジョンで、しかし、より地域密着型のサービスへというビジョンです。そのため、この新たな段階を迎えてもちろん新たな規約、新たな財政が必要になります。
大切なことですので触れておきます。緑のガイドがご覧頂けると思います。それは成人向けりモデルと全く同じものですが、児童向けの新しい施策と彼らの参加について書かれています。詳しくは申しませんが、そのビジョンは全く同じで、同じように取り組みました。16才と25才で区切られるネットワークがあってその年代は二つの領域にまたがっています。



45 協約 : 基盤

▶地域での多職種連携
▶質のよい文化
▶出現時の年齢と年齢的変化への注意
▶心理学的ケアの強化


人生は続いているものですから当然、それらのネットワークは途切れたものではありません。例えば児童期に関する国家委員会、学校、その他全ての児童支援サービスなどの関係者を含むように、ケアと支援が組織され、再編されたものです。そのビジョンは、更にもう一つ別な省庁が加わったとしても変わることはありません。人々へのサービスの見直しを図る時には、ベルギーを分断してしまうような、今有る能力を引き裂いてしてしまうような不毛な議論は不要で、正にその逆、つなぎ直すことこそ必要なのです。私たちはそんなことを日常的に訓練していると言えます。
規約は、心理専門士というよりはプライマリーケアに携わる臨床心理士と障碍者学習支援サポーターの健康保険適用についてのものです。
新たな専門職がこのグローバルな改革に登録すると新たに規約を書き直します。地域の多職種間協働を成し、質の高い文化を成し、年齢の推移に応じ、そして心理学的ケアを強化するようなものが含まれます


46 協約 : 地域での多職種連携


『より効果的なケアを提供することを目指して、保健関係の異なる専門研修を受けた多くの専門職が患者や家族、介護士や市民と共に働き、様々な異なる介入の場において互いに補完的なサービスを提供する。』(WHO.2010)


これは、地域における多職種間協働を意味します。



47 協約 : 地域における多職種間連携と地域ネットワークへの挿入


○ 小さな地域でのネットワークに各種サービスと専門職間の絆を築き、相乗効果をもたらす。
精神保健、予防と早期発見、リカバリー、社会復帰、社会的な活動や経済活動に加え、健康全般に関する領域を含む。
○ グローバルアプローチと統合の中に全てのサービス、全ての関係する専門職を等しく引き立て、それらの社会資源を評価し推進する。
○ 人口75,000から250,000で区分されるより小さな地域での専門外来ネットワークを構築する。


地域レベルでというのは、連携と相乗効果を図るということです。
今でも同じ関係機関とやっていますが、とてもローカルなレベルにおいてです。今後は住民が75,000から95,000人規模のより小さな領域を目指していきます。それでもそんなに小さいとは言えませんが、どのネットワークもまだ小さくできるでしょう。この人口的な区分けは、大体皆さんのプロジェクトや活動と同じくらいの規模ではないかと思います。



48 協約 : 地域での多職種間協働


地域での多職種間協働により可能になるのは、
○ 地域の統合的な仕組みへの移行
○ 地域住民のためのケアの共同創造と組織化、ガバナンス
○ 社会資源の階層化と住民のマネージメント
○ ケア過程の最適化とその記録(共有) 
○ ネットワークにより可能となる利用者を中心におくケア、目的を軸とする多職種間協働による支援


ここでしようとしていることは、重要な専門職に対する健康保険の適用です。時間の関係で全てを説明することはできませんが、考え方としては、前線でアウトリーチする臨床心理士と専門の心理士の存在を強化しようというものです。
従来の精神科セラピーでの健康保険適用とは全く異なる、むしろ従来見過ごしてきた機能を支え統合する形で行われる、臨床心理士などのセッションへの健康保険適用です。主にプライマリーケアにおける臨床心理士向けのもので、早期発見のためであり、もし問題があればその所在を特定できるようにするための機能であり、プライマリーケアとまた、その利用者自身が自分で専門的なサービスを利用できるように支援するためです。または、むしろ以前から心理社会的な問題があった人などのケースです。



49 協約 : 地域コーディネーターの財政 


地域コーディネーターの財源
 人口的な要素に応じてコミットメントに重みづけをする
・地域の協力機関と精神保健ケアネットワークを結ぶ
・地域ケア提供の共同創造と仕組みづくりをやり易くする
・クリニックレベルの専門職間連携をやり易くする
・精神保健ケアにおける文化の進化と変革の文化を伝える
・変革のマネージメント、戦略とプロジェクトをマネージメントする専門職
・戦略的計画を開発し評価する
・ネットワークにおいて、中立的で信頼できる関係者
・ネットワークコーディネーターと公衆衛生サービス支援が共同で進める


これは大変重要なことです。
それは保健省の会議が月曜にあってその夕方にはウェブ会議が開かれるからではありません。
理解するべきことは、健康保険適用が全く従来の健康保険適用とは異なるということです。
当初は、プライマリーケアに当たるクリニックの臨床心理士がまさか家庭医を前線で支えることはないと考えていました。つまり、そのプロセスを必要とする全ての人々について、その身近にいる家庭医と近親者の声を聞き、実際に現実的な必要性に集中できるようにし、これらの人々が本当に専門的なケアを必要としているのか、を報告するということです。
私たちは本当に必要な時以外は専門的なケアがなるべく必要にならないようにします。それが私にはとても大事なことです。この人は正しい場所に居るのだろうか、というこれまであまり問い直したことのない考えをこの仕組みに導入することは、取り組みの当初から難しく感じていました。ただ、専門的なケア同様に、社会的支援な支援が充分であるようにと願いました、専門的なケアに関してはそのような成り行きです。



50 協約


提供サービス


専門化した精神保健ケア
専門化された精神医療機能
児童/青年期
個人セッション : 最大20回
グループセッション : 最大15回(+前後に個人セッションを1回)
成人
個人セッション : 最大20回
グループセッション : 最大15回(+前後に個人セッションを1回)


プライマリーケア
プライマリーケアの精神保健機能
児童/青年期
個人セッション : 最大10回
グループセッション : 最大8回(+前後に個人セッションを1回)
成人
個人セッション : 最大8回
グループセッション : 最大5回(+前後に個人セッションを1回)


・ 個人セッションとグループセッションで同じ機能を重複しないこと
・ 期間は12か月
・ 患者は成人または児童/青年のいずれかで、12か月間のケアを受ける par 12 mois
・ 一人の専門家が2つの機能(条件)を実施することができる。
  
ネットワーク成員の5%の承認を得れば、例外的に1セッションの追加が許される。


臨床心理士に関して、健康保険を適用するかどうかで機能を2つに分けました。皆さんは、既に彼らが組み込まれたことがお分かり頂けると思います。プライマリーケアのために、児童、青年、成人にアウトリーチし、何回かセッションを行う前線の臨床心理士、そして、異なる専門性に特化した心理士に分かれます。
(現在または過去にガン患者の経験があったり、ある種の問題性を理解するのが困難な人で援助を必要とするなど)。私たちはこの専門性に対して専門的な臨床心理士への健康保険適用を、セッション単位に割り振りました。
私たちはものごとを明確にするために誰が伝達の役を担ったのかを説明できます。それは、既に何年もかけて発展させてきたネットワークに組み込まれる補完的な資源であり、ネットワークの真ん中を占めてはいけない、特別なサービス供与だということをお話ししました。
それは施策の中に盛り込まれましたが、それは多分それまでの取り組みに欠けていた鎖のひとつだったのでした。それが私たちに統合的な支援とケアというビジョンへと到達させてくれました。私たちは精神保健より更に先に進みます。私たちはロコローカルと呼んでいる極小地域の関係者の協力をより直接的に取り込んでいきます。そのために私たちはクリニックの臨床心理士にその役割を与えるのです。



51 協約 財政


財政


専門化された精神保健ケア
プライマリーケア


専門心理士の働き       プライマリーケアの心理士の働き
・ セッションにつき
・ 勤務または個人営業の場合 :
個人セッション (75ユーロ/セッション、45分から60分)
グループセッション (126ユーロまたは200ユーロ/セッション、90分から120分 )
多職種によるカウンセリング:225ユーロ (最大1回/年/利用者)
独立に対する実施の割り出し料金を定義する
多職種協働(公益事業評価)に対する報酬は60ユーロ(最大1回/年/利用者)
・ 利用者側 (直接徴収)
グループセッション 2,5ユーロ/セッション
個人セッション : 4-11ユーロ (プライマリーケアの心理士セッションの初診は無料)


料金は法外に見えるでしょう。1セッション75ユーロにしようと思いますが、ベルギーに先立ちフランスで実施された額に比べると高いでしょう。しかしこの75ユーロには多くの費用が含まれます。私はアウトリーチと言いました。私たちが期待しているのは開業して自分のオフィスに留まる専門職ではなく、アウトリーチする専門職です。
例を挙げましょう。それは市役所で社会的活動が行なわれる場合にはそこにアウトリーチするということです。それは、必要とあれば他の専門家とともに、必要な場所に出向き、社会的な活動を精神病理化することなく、ひたすら具体的な行為によって、ケアにアクセスができないでいる人々の問題に対処するという意味です。
このような援助をビジョンとして持っています。グループセッション、多職種によるカウンセリングに財源を振り分けることにより重点強化することです。




52 協約 : グループ形式による介入


グループによる介入の利点は :
 公衆衛生の視点からの精神保健
 個人セッション同様に効果的
 精神保健サービスを必要とするケースの早期発見に寄与
 グループのダイナミズムが次のことを可能にする :
○ノーマライゼーション
○社会との繋がり
 収益性の改善 
→  アクセス可能性を発展させる
2人一組の有効性を実現する(最小限、精神科医または臨床心理士 + 他の専門職)
参加者は最小4人、最大15名
1回のセッションは90-120分


必要性なのは :
クリニックの充分な能力と連携性
文化、年齢、場所、地域などの特性への適応



53 協約 : 専門職


専門職について
以下が協働
左枠) グループと個人への介入には :
・ 臨床心理士および学習支援サポーター
○専門的なプライマリーケア
○勤務または独立営業
○公的な児童、青年または成人向け


右枠)  グループ介入には :
・ 支援とケアの専門職
・ ピアサポーター
・ 一般総合医
専門職のための個別協約 



グループ介入の場合について言いますと、専門性を評価すると同時に、特に、ピアサポーターなどのような他の専門職に対する経済面のことも指します。お話ししたグループセッションは、もちろん常にプライマリーケアを専門とする臨床心理士や専門心理士、学習支援士の監督を必要としますが、二人一組でおこなわれるのはより良いことなので、組んで働く他の専門職、社会教育士やアニメーター、ケア関係の専門家、ピアサポーターまたは家族サポーターにも、健康保険適用の恩恵があります。
そしてもちろん家庭医の存在も、私たちのビジョンにおいてますます中核をなす重要な役割となってきています。しかし家庭医も単独では一人の人の問題を規定することはできません。そこでの繋がりによってよい働きが生まれるのです。そしてまた、ピアサポーターを計算に入れることが非常に重要です。彼らがこの全てのプロセスにおいて益々重要な役割を演じることになるよう期待しています。



54 協約 : 臨床心理士と学習支援士に必要な条件


臨床心理士と学習支援士に必要な条件 :
 健康に関する規定に乗っ取った専門職を実施する認可を得ていること(資格)
 ネットワークでの仕事が最低8時間/週
 最低年3回の介入参加
 最低限の医療経歴


 主体的、機動的な生活の場へのアウトリーチ
 地域でのケアを個人ケアより優先
 全ての他の分野の専門職との協働適性(専門職としての秘密保持を厳守)
 利用者とその環境を最も重視する(各段階で適切なケア)
 精神保健改革のビジョンの理解
 ケアの質の向上のためにエビデンスを基礎とした継続研修
 研究への参加適性


私たちの協約はとりわけグループでの介入、公衆精神保健というビジョンに基礎をおいています。私たちはグループでの介入も通常の介入同様に、早期介入に効果的と考えています。グループでの介入はノーマライゼーションを可能にし、社会的なつながりの創造にも期待できます。そのためには何と言っても特殊な専門性が必要となるわけです。
そんなわけで、これらの専門職の中でも特に臨床心理士に注目しているのです。ベルギーではここ3年ほど、心理士とは医療専門職と認識されていることを知っておいて欲しいと思います。この機能は医療的機能の形をとっています。
ですから、その専門性を違った方法で評価する必要が生じ、このようなステップを経ることになりました。しかしもう一度申し上げますが、それは新たに創設された専門職ではなく、私たちが創り上げた広い意味でのネットワークを補完するために組み入れたのだ、ということを強調しておきたいと思います。それは単に、アウトリーチと連携として構築されたビジョンと、支援とケアの多職種間連携を容易にするためなのです。



55 協約事項 : 実践の場


実践の場
→ 現在提供されているものに加えて更に提供する
→ 地域にアウトリーチし、利用者の必要に適応する
→ 責任ある多職種間連携を支える


プライマリー精神保健ケアの働き
 生活の場で、人々のそばで、が理想的
 身近な場での実践
 できる限り敷居の低い場で
 精神保健上のスティグマのない場で
 地域社会に溶け込む
 多職種間連携を容易にする
 個人のクリニックでの単独診療は、規定からはむしろ例外的


専門的な働き
 できる限り敷居の低い場で
 多様な場で(精神保健と認識されない場で)
 個人的なクリニックでの実践を拡げない


これらは実践の場ですから、どこにも矛盾が生じないようにしました。むしろ、それまでにあった専門的な場のようには行われないようにしたと言った方がいいかもしれません。目指したのは『アウトリーチ』です。私たちのやり方は『人々を方向づけるために追う』のではなく、私たちが『出向く』、移動するというものです。



56 ご清聴ありがとうございました
すべての改革は、既に実施したことのすべて、そして今もなお続けている改革の要は、この機動性という考え方を実践に移すものです。それはモバイルチームだけではありません。システム全体の機動性です。異なる問題を抱えた人たち、時には複合的な問題を抱えた人たちが、私たちの構築したシステムの中を散歩してみて、時を得てよい支援を受けられたと言えなければなりません。



【感想と質疑応答】


ジャンリュック
ありがとうございました。とても情熱的な介入でしたね。改革はますます発展することと思います。
私たちのDIUの仕事仲間もここにいます。それはいつもとても嬉しく思っています。


私は、2つだけ気づいたことがあります。
ひとつ目は、あなた達は極小地域における活動分野という考えに到達したということです。その次元については議論されるべきところですが、正に小さな区域を地域ととらえる考え方は人々にも興味深く受け入れられることと思います。明らかに、マクロのレベルでも極地域のレベルでも充分でしょう。というのは、究極的に私たちに本当に興味があるのは、町角でまた路上で起こっていることだからです。ですから、フランスの地区区分に関しては程よい大きさだと思います。よくないのは、その仕組みです。115.000人、セクターの規模はまあまあでしょう。介入者同士が知り合うには充分な規模で、大過ぎはしません。


2つめは、議員さんたちを介入させなかったのはなぜでしょうか ? フランスでは、精神保健地方委員会への、市民レベルの参加者として市長が入っています。理由として、彼には召喚の権限があるからです。そのコミュニティの人たちが関心をもった時点で、市長は全ての人に対して召喚の権限を持ちます。ベルギーではどのようになっているのか知りませんが、ミクロレベルでの整合性をしっかりとる必要があるからです。


3番目に心理士についてですが、よくやりましたね !
イギリスがまず私たちに前例を示してくれました。フランスではそれはあまり語られませんが。心理士が医療職なのかそうではないのかということもあまり知られていないようです。よくあることですが、それは世界でもフランスでだけの基準です。ですから私は、ずっと以前からイギリスが我々に先行して、心理士が診療所に配置されていると言ってきました。また、精神科看護師が総合医のところで働いています。
それに加えて、このように直接この任務にあたることを許すのは、この連携による効果が確認されているからです。通常私たちがこの連携をとると、逃れにくくなります。ですから私たちは、仕組み全体を変容させるには、システムが拡散しすぎていると言えます。
チャットにNさんの質問があるようです。


Q.
大変内容の濃いプレゼンテーションをありがとうございました。このプライマリーケアにつく臨床心理士の仕組みについてですが、国全体に実施を広げる前に、どこかの地域で、評価のための実験は行われたのでしょうか。行われたとすれば、その報告書はありますでしょうか ?
その仕組みの中での人々の位置はどうだったのか、特に、より漸弱な人々とケアシステムから遠ざけられている人々などは ?
人口毎に必要な心理士の人数などの見積もりなどはありますか ?


ベルナルド
そうですね、詳しいことはモーガンに譲るとして、最後の部分に少しお答えします。この段階での予算は二年間で200万ユーロ、しかし既に実施中の他のプロジェクトがあったので、実質150万ユーロでした。その時点でこの予算を再配分しなければなりませんでした。試算によれば、このミッションの必要に充分あてることができると考えられました。
もちろん、それでは充分でないと言うこともできます。その意味では答えはないとも言えます。
その他の質問はモーガンに譲って、答えて頂きましょう。彼女が才能を発揮できると思います。


モーガン
ベルナルドの答えを補足いたします。プレゼンテーションの中では格別詳細が語られなかった部分になりますが。
このサービス提供は全ての人を対象としたものではなく、ターゲットは精神保健上何等かの問題が始まったと思われる人たちです。ですので、まだ比較的社会に適応していて、まだ能力があり、心理士の下でセッションを受けてそれなりの平衡と元気を取り戻すことができる人たちです。
ですから、問題は比較的軽いものと言っていいでしょう。他に、より顕著な問題を抱えていても、必ずしも積極的なケアを受ける必要がないという慢性的な人たちがいます。でもそれは全ての人というわけではないので、というのは他にも必要に応じてモバイルチームや病院といったケアサービスがありますから、その分少し減ります。ベルギーの全人口1100万人に対してというより、限定された住民数に対するサービスとなります。
一番目の質問についてですが、はい、最初にいくつか数年間にわたる実験をしました。既にフランドル地方では地区におけるプライマリーケアで、臨床心理士の導入を始めてすでに数年経っていました。次に2019年から2021年までは国レベルで実施しました。つまり、連邦国レベルでプライマリーケアの心理士への健康保険適用を定めたわけです。
ですから、そういうところからも何が効果的で何がそうでないか、私たちも多くを学ぶことができました。


ベルナルド
もちろん、科学研究チームや科学的評価を担当する大学のチームと協働しています。


モーガン
あまり拡張できなかった最初のプロジェクトの延長として、この新たなサービス提供を適用できるようにと、それも考慮しました。
ですから、はい、国レベルの統計もあります。研究者による次の広報が用意されていると思いますので、後程それをあなたにお送りできると思います。どちらにしても、より詳しいことをお知りになりたいようでしたら、私たちの観察結果を知りたい場合は、サラと私に言ってくださればそれは可能です。
私たちは8回のセッションにアクセスした場合の料金体系を示す医師の処方箋に基づいたフォーマットを用いました。フランスでも既にぶつかっている問題だと思いますが、つまり、それが医師の規定であったこと、予算が潤沢ではなかったこと、セッションの数が人々のニーズを満たすのに不充分であったこと、これら3点が批判材料となりました。
しかし、このプロジェクトを始めたときの臨床心理士たちの実践が必ずしも適したものではないことも観察されました。多くはクリニックでの精神分析的なビジョンに留まっていたので、つまり必ずしも予防というニーズのある人々に向けた、他の方法への展開を求めているわけではありませんでした。
この財政政策は、結局、必ずしもターゲットとなる人たちだけのためではなく、少し遠回りですが、全ての人のアクセスのために用意されたものになるのだと、気づきました。


ベルナルド
私はご説明したでしょうか。その疑問のうちで私が興味をもったのは、この仕組みの中で、彼らがどのようにして、特に脆弱な人々についてですが、その点をあまりクリアに具体的に話していなかったと思います。このモデルを用いてアウトリーチするとは、人々が生活しているところに出向く、人々が困難を抱えている場所に出向く、ということです。それは市民社会支援センターにも出向くということです。
ジャンリュックも言ったとおり、地域と共に働くのです。私たちのところではコミューンと呼びます。そしてアウトリーチするのです。ですからそれは、どのように脆弱な人々を私たちの仕組みに組み込み方向づけするかではなく、私たちが出向き、探し、出会うのです。それは専門的サービスのために患者や状況を吸い取る掃除機のようなものではなく、正にその逆です。


ジャンリュック
このDIU追加の4番目のセッションをベルギーでしなければいけませんね。マルセイユほど新奇ではありませんが。一週間くらい。


モーガン
私たちの処方による支援では、直接的なアクセス可能性にしても、いずれにせよプライマリーケアの場合は、ターゲットとなる様々なグループに現場で、アウトリーチの訓練を積んだ専門チームによる地域性の高いサービスを提供します。つまり、学校、公共サービス、コミューン、街角、時間外の補習学校などで、実際には該当する人々の必要に応じて、もっと多くの場所に出向いています。より緊急性の高い問題に、より専門的なケアを望む場合に、より一般的な見解を得るために、またその状況に合うように、医師とも協働してよりその問題に特化した働きをします。
ですから、協働と専門職の移動を可能にするために、いわゆる処方箋は廃止いたしました。


ベルナルド
心理士も診療所から追い出さなければならないのがわかるでしょう。


モーガン
75ユーロもと思われるでしょうけど、そこから移動費用などをカウントしているからです。


ベルナルド
他にご質問はありますか ?


Q:
私はリヨンの心理士です。発表をありがとうございます。私はベルギーの改革について、詳しいことはほとんど知りませんでした。心理士の立場から聞いていたのですが、フランスで心理士に何が起こっているのかがよく想像できました。
あなたの国では、すでに多くの場所で実践されていた名もないことをモデル化しました。
私が今携わっているのは、実は、あなたが仰られたようなことです。私はフランスのある協会に属して活動しているのですが、そこには精神保健へのアクセスを助けたり予防したりするモバイルチームがあります。ですから、私たちはアウトリーチをします。社会福祉センターでグループを組織し、グループに所属している人々のいるその高層ビルの下層階に出向きます。精神医療化するためと言うよりむしろそれとはほど遠いもので、なぜなら脱スティグマ化や精神心理とは何かという疑問と、ケアへのアクセスと要請という問題が出現してきているからです。
そこで逆に窺いたいのは、個人がパーソナルな財政援助によって実験的な試みを行えるのだろうか、ということです。それならば、実際、それは診療所に籍をおく心理士にも関係してくるだろうと思います。ロラン先生が仰るのは、診療所が選択したのは、町での実践でする選択ではないという意味だと思いますが。
私自身は社会的つながりの中で研修を積んで、またそれを膨らませるためにここに参加しています。そのためにはコミュニティケアの実行が不可欠です。そこで自問しているのですが、どう呼んでいいのかわかりませんが『ハイブリッドモデルというのは可能なのだろうか ? 私たちフランス人の考察を育むために。』


ベルナルド
完全な自由業ではなりません。サービスについている心理療法士で、かつ協約を結んでいる、という条件があります。


Q.
というのはいる、ということですね。


ベルナルド
その通りです。詳しいことは申し上げられませんでしたが、モーガンとサラはもっとうまく説明できると思います。私は一時間半で改革の全貌を語りたいと思いましたので、いうならば全てを輪切りにして詰め込んでしまったようなものです。
しかし、はい、実際仰る通り、確かにそれこそが特筆すべきことなのですが、ベルギーにある3つの政府と地方の専門職を正しく認識すること、私にとってそれは、協働する各分野と現場です。そして、『邪魔するようなものをおかないように気をつけよう。専門職の人たちを弱体化させるような当局であってはならない』と思っていました。
その創造は何年も前から築かれてきたものなのです。それらを利用しよう、モデル化しよう、そこにあるものを利用しよう、と。とりわけ、それまで長いこと病院がしてきたことを取り上げることなく。あなたの仰ることは完全に正しいです。それは存在します。何ひとつ創出したものはありません。何ひとつ。


モーガン
モデル化すること、熟考すること、研究することは、どちらにしても重要なのです。


ベルナルド
そうですね。申し上げたように、フランスでもベルギーでも、どこでもより素晴らしい経験があると思います。でも政策的な現実や、各々の領域内で想像されること全てを、あらゆる場所に適用することはできません。ですから、できるだけ合意に達するように、それらを使って最大限、何かしてみなければなりません。他のことはそこに付随してくるでしょう。とそれが、ジャンルックが私に言ったことでした。君は抵抗する人たちに遭遇するだろうと思うけど、彼らが年金を受け取るのを待ちましょう。その時には、精神科医のことを語ったなあと回想することになるでしょう。冗談ですよ、冗談です。それは情熱的でした。



ジャンリュック
ベルナルド、とても興味深い情報を本当にありがとうございました。私のところでも同僚たちが大変考えさせられることです。どちらにしても、国を入れて4つの国の中に4つの政治区分があってもできるのですから、国レベルでも改革は可能だということですね。
みんなの合意を取り付けなければならないとしても全然可能で、もう結構です、というフランスの不信癖の中にも希望は持ち込めるのです。


ベルナルド
まだまだ沢山しなければならないことがあります、ジャン・リュック。
皆さん、ありがとうございました。皆さんのキャリアに幸運をお祈りします。私の同僚たちにももう一度お礼を申し上げます。



2021年度DIU医療系大学間継続研修講座『地域精神保健』より、ロラン氏により翻訳許可

×

非ログインユーザーとして返信する