~~ 市民による地域精神保健 ~~ 

- 健康は権利 - (無断転載はお断りします) 中村佳世

【病院の変容と精神保健改革 要点】

病院の変容と精神保健改革


病床数を減らすことが難しい理由として、日本では精神科病院の約90%が民間のため、経営問題と関連があることがよく挙げられます。みんなネットやきょうされんなどで改革が紹介されたベルギーも民間病院が85%、実は日本と似たような状況で欧州一の病床大国でした。改革は30年位前から始まり、現在病床は半分に、いわばトライ&エラーの歴史です。
日本と状況の似通ったベルギーがどのようにして改革に成功したのか見てみましょう。


【強制入院】
1990年、まず強制入院の条件を定めました。
① 精神疾患があること
② 自傷他害のおそれがある
③ 他の方法を探ったが見つからない
これらを確認する方法は年々進化しています。①は精神科医が、②と③は、本人はもちろん、憲法に保証された基本的自由を確保するために、医療関係者の他に弁護士や判事が参加し、精神保健福祉士、家族、時には本人の信頼する人を交え入院以外の可能性(退院支援のように)を探ります。


2000年頃から訪問看護が一般的になり、特に都市部では所謂先進的な地域精神保健の考えも広まっていきました。
2010年、日本でも講演されたベルナールさんが保健省の改革プロジェクトリーダーとなって思い切った改革を始めます。彼は病院で働く人たちのことも考え、病院の協力なくして改革は不可能と病院を味方につける方法を探りました。


【改革の理念】
本人と家族の希望を徹底的に聴き、それを実現する方法を探る。
病院も含めた地域の専門職が平等な立場で役割を尊重し連携し協働し、自ら評価する。
コーディネーターが理念を伝え、進行を見守り中央との連絡を取る。


【改革の道のり】
まず、病院が地域との連携に資金を回せるように一定期間特別な病院法を制定し、それに伴い、ブルーガイドと呼ばれる30ページ程の手引き書を作成します。そこには、地区ごとの歴史、現状、目的、理念、研修、プロジェクト(期間と内容)、評価方法、などが書かれています。モバイルチームには補助金を出し、病院が地域と協力できるようにしました。
コーディネーターの教育も重要でした。地域のあらゆる専門職が互いに協働できるように一堂に会し話し合いを重ね、互いの仕事の内容、役割を理解し、地域連携のプロジェクトを自ら作成し、それを評価するようにしました。その中には必ず利用者と家族がいて希望を述べ、意見が出せるようにしたことは重要です。


今ではグループホームも増えその質も概ね良好、フランスからの利用者も受け入れているベルギー、今年は2回目の国連審査があります。念のため提出されているUniaという障害者協議会のパラレルレポートを調べてみると、「強制入院の連行の際に暴力のために死亡」した3人の個人名が記されていて警察官の教育の強化を訴えています。他は特段の苦情は見当たりませんので、改革は受け入れられ概ね満足ということなのでしょう。
(WHO協力センター及びフランス医療系大学間継続コース講義2021他参照)

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