~~ 市民による地域精神保健 ~~ 

- 健康は権利 - (無断転載はお断りします) 中村佳世

利用者による『精神保健における利用者憲章』

利用者により作成された
『精神保健における利用者憲章』


★ 注意
役立てて頂けるように無料で翻訳したものです。ご自由にご利用ください。
翻訳した旨とそのお礼を、草稿者代表であるクロードさんにお伝えしたところ、憲章は法的な効力を持つものではなく、あくまでも憲法、法律、及び障害者権利条約が基準となりますとの事です。


【はじめに】


2000年12月8日、フランスの健康と共助省の障害担当秘書官同席のもと、精神保健利用者団体連合FNAPSYと、病院団体代表により署名されました。


【精神保健における利用者憲章】


1 一人の完全な人
精神保健における利用者とは、人間としての尊厳のために敬意と配慮が尊重されなければならない人です。
利用者は、プライバシー(私物、郵便、介護、トイレ、個人的なスペースなど)、個人の私生活、および個人的、医療的および社会的情報の機密性が守られる権利があります。
この目的のために施されたケア等による職業上の秘密保持は、法により保証されています。
患者が精神科医に述べたこと、および精神科医が検査または治療中に気づいたことについては、患者自身または第三者への深刻な損害を避けるために開示する必要があると思われる場合を除き、すべて秘密が守られなければなりません。ただし、この場合にも患者は、秘密が開示されることについて知らされなければなりません。
利用者は、子供扱いされたり、身体的または精神的に障害があると見なされたりするべきではありません。
利用者の信念は尊重されるべきで、自分で選んだ宗教の長を頼むことができます。


2 苦しむ人
精神保健の利用者は、病気そのものに矮小化されるべきではなく、ただ病気にかかっている人です。
この病気は恥ずべき病気ではなく、治療しそれを生きる病です。
精神保健においては、利用者の肉体的、心理的苦痛に配慮することが、常にすべての介入関係者の関心事でなければなりません。
精神科医は利用者に、知る限りの最善の治療法を提供しなければなりません。
精神保健の専門家は、利用者に関する有用な情報を交換し医療的ケアや社会的ケアを最適なものとするために、ネットワークで協働する必要があります。特に、精神科医とクリニックの一般医との良好な連携が保証されることです。(精神科医とかかりつけの家庭医とのつながりは、実際、患者の居住地に可能な限り近く、質の高いケアのために不可欠なつながりの1つです)この必要な連携においても、専門家の秘密保持義務に関しては特に注意を要します。
精神保健における健康と社会との有機的な繋がりを考える時、利用者の利益のために開発されたプロジェクトは、介入する人々の都合による人為的な分野の分断にさらされてはなりません。
全ての人にケアへのアクセスを確保し、利用者の幸福のために装備された施設内で、妥当な時期に、暖かく歓迎されなければなりません。
入院することになった場合も、セキュリティ上の問題がある場合を除き、利用者は滞在中の私物を保持管理できます。
利用者には、入院する病院の滞在と場所に関する情報および利用者の権利と義務を知らせる実用的な案内書を渡さなければなりません。
施設の敷地内での電話や通信によるコミュニケーション、訪問および外出については、患者と医師の間で定期的に話し合われるべき項目として契約されます。また、そのコミュニケーションは他の患者のプライバシーを尊重して行われなければなりません。
入院後に質の高いケアを組み立てる必要が生じる場合には特別の注意が払われます。


3 適切に配慮された、明確で誠実な方法で情報を与えられる人
利用者は、医師と病院を自由に選択する権利を持っています。それは契約関係における自由な相互コミットメントの私たちの健康法の基本原則です。ただし、緊急の場合や、医師が法に定められる人としての義務を果たせない場合を除きます。(公衆衛生法第L.1111-1条および医療倫理法第47条)。
利用者は、彼のために働く人たちの名前やそれぞれの役割、また精神保健ケア組織(各セクターやセクター間の組織構造など)についての情報を得ることができます。
法律で決められた手順に従って、誰でも自分の医療記録および管理記録に含まれる情報にアクセスできます。
患者本人に対しては、医療を秘密にすることはできません。医師は、健康状態、提供されるケア(特に、適用される治療法のいわゆる「副作用」について)、および代替となる治療法について、簡単、公正でわかりやすくアクセスしやすい情報を提供する必要があります。緊急の場合を除き、利用者は、自分がまだ十分な情報を持っていないと思い、熟慮する時間や医学上のセカンドオピニオンを望むことも可能です。
生物医学研究の際には法律を厳守し、前もって利用者の自由意思によって明確に表明されたインフォームドコンセントを得る必要があります。
ケアスタッフのための研修(初期および継続)時に患者が対象となる場合は、事前の同意が必要です。患者による拒否を無視することはできません。
未成年者の場合は年齢と理解力に応じて、法定代理人に対する通知義務とは独立して、本人にも可能な限り重要な情報が伝えられます。
患者の事前の同意があり、患者の健康状態が許し、患者の同席が可能な場合、親族が担当医師やケアスタッフと対話するために十分な時間を持てるようにしなければなりません。
利用者はソーシャルワーカーに会うことができます。
入院が必要であることが判明した場合、患者はこの入院と、他の救済策の条件について明確で適切な情報を直ちに受け取ります。最初のうちは症状の重症度のせいで、この情報が正しく理解されていないリスクがありますから、必要に応じてその後も繰り返し説明されます。
利用者は、入院時と滞在時の条件に関する、明確でわかりやすく適切な情報を受け取ります。


4 自分に関わる決定に積極的に参加する人
利用者を継続的なケアプロセスの中心に据えるために、利用者に関するあらゆる決定への利用者の積極的な参加が常に求められなければなりません。
法律で定められた強制入院の場合以外、入院患者は、自分の状態の潜在的なリスクについての情報を受け取り、退院書類に署名した場合は、いつでも施設を出ることができます。
患者が、精神的な疾患のために、自分にとって何が利益かについて判断することができない場合、彼自身または第三者に深刻な結果をもたらす可能性がある場合を除いて、彼の意志に反して、また彼の同意のない治療的アプローチを行うべきではありません。
患者の状態が彼の同意なしにケアを必要とすると法的に判断された場合を除いて、患者を施設に留めておくことはできません。その場合は患者に、法的状況と彼の権利について知らせなければなりません。
治療の有効性と治療の受入れについて考えるなら(精神保健においては特に)、たとえ同意なしのケアが必要な場合でも、本人のケアや日常生活に関することすべてについて、常に最高度の情報提供を図り、本人参加の機会を探る必要があります。
ただし、真の共同治療プランを築くことと、単純な相互の透明性とを混同してはなりません。
利用者に対して、本人意思に反する入院が必要な状況が解消した場合は、精神科医は直ちに、本人意志に反して適用された措置を中断しなければなりません。
未成年者は自分に関する重大な決定を下すことができないので、彼らの代わりに同意を表明するのは親権者の責任になります。ただし、法定代理人の拒否または法定代理人の同意を得ることができない場合に生じるリスクにより、未成年者の健康が損なわれる場合、医師は、可能な治療を提供できるようにするために、事案を検察官に委託することができます。ただし、これらの措置が医学的に示されるものを超えて拡張されないように注意する必要があります。未成年者の意見が得られる場合は、可能な限り医師はそれを考慮しなければなりません。
また、医師は責任能力のない成人については後見人等の意見を考慮に入れなければなりません。


5 不当だと感じることのできる責任のある人
満足度評価票(各患者に入院案内で提供されている)に説明されている評価結果とは関係なく、利用者またはその受益関係者は、彼らの意見、希望または要求を、直接施設長に伝えることができます。
施設機能の不具合を訴えたい場合、または偏見により不利益を受けたと思われる場合は、方向づけを支援できる調停に責任のある病院長、精神科入院部門委員会、支援と指導を担当する地方調停委員会等に、調停または可能な他の方法を示してもらうことができます。(彼らを罰することにならないようできるだけ早急に)。


6 家族社会的環境や職業環境が考慮される人
依然として利用者が差別の犠牲者となることが多すぎる社会職業的環境への包摂を促進するために、利用者のために実行されるアクションは、精神疾患を理由に過小評価されることがないイメージを伝えることを目的とした施策であることを保証します。
ケアチームは、患者が段階的に社会復帰を促進することによって自分自身を再建できるよう、患者の能力、知識、それらを利用するノウハウを積極的に活用できるよう、治療過程一歩一歩に関心を持っています。 また、各自のリズムを尊重するために各段階について患者と話し合います。
患者との同意事項を厳密に守ることで、家族は治療プロジェクトに参加し、最も正しい態度がとれるよう、また彼の種々の困難に対してサポートが受けられるように、情報を得ることができます。


7 孤立から抜け出す人
健康と社会の両方の分野の専門スタッフの良好な連携により、患者は、連帯の絆を築く場である精神科の利用者団体 : 情報交換の場、聞いてもらえる場、出会える場、交流の場、共生の場、快適さが感じられる場、に関する情報を受け取り、連絡を取り、社会的なネットワークを築くのに役立てます。


8 市民としてその声がケアと予防システムなど健康政策の発展に影響を与える人
精神保健に関する利用者の満足度については、情報やケアの質を向上させるための土台となる調査、特に受入れや滞在の状況に関する定期的な評価調査を受けなければなりません。
発展のうちでも特に実り多いとされている対話の枠組みの内で、利用者がその経験を通して積極的に開発の各段階に参加し力を尽くすことは、精神保健に関する各当局の振返りと決定に貢献します :
- 地方レベルで : (理事会、調停委員会、C.L.I.N、C.D.H.P、セクター評議会、ワーキンググループ、特に質の高いアプローチと施設の認定に関連するものなど)
- 地域レベルで : (地域健康会議、S.R.O.S.S。および健康マップ、A.R.H。およびD.R.A.S.S.によって設立されたワーキンググループなど)
- 全国レベルで : (国民健康会議など)
情報の質、受入れ、ケアおよび予防の絶え間ない改善の過程で、専門家は、孤立から抜け出し、医療システムのスタッフや意思決定者にニーズ、意見、提案を表現できる協会を創設するイニシアチブを支援することによって、ユーザー団体代表の確立のための条件を促進します。
健康に関する真の民主主義の活気に満ちた前進のために、精神保健の利用者は、このように積極的かつ情報に基づいた参加を通じて、わが国のケアと予防システムの人間の顔を持った前向きな進化のための決定的な市民の貢献をもたらします。


この憲章は、2000年12月8日にパリで以下の出席の下に署名されました。
ドミニク・ジロー夫人:保健および障害者担当大臣
クロード・フィンケルスタイン夫人:全国精神医療利用者団体F.N.A.Psyの会長
アラン・ピドル博士:議長
ジャック・ロンバード氏:全国精神医療利用者団体F.N.A.Psy.の名誉会長
イヴァン・ハリミ博士:会議の副会長(利用者および家族関係者)
F.N.A.P. Psy -24 Rue de Maubeuge-75009 Paris
C.M.E.の大統領会議deC.H.S.-医療心理学クリニック-57370 ファルスブール
(翻訳 中村佳世)

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