~~ 市民による地域精神保健 ~~ 

- 健康は権利 - (無断転載はお断りします) 中村佳世

2023年2月 ドキュメンタリー映画『12日』上映と意見交換

2/28 火曜日 19:00 - 19.40【退院審査】

上映と座談会、意見交換 (19:00入室、延長有) 
ドキュメンタリー映画『12日』 レイモンド・ドゥパルドン監督
凡人から賢人へ、向かう途に狂人を経る - ミシェル・フーコー -
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退院審査、入院後6か月目の定期審査
No 5 ザイード男性 20歳 判事 : 男性 60歳くらい
判事   あなたはベルノック ザイードさんですね。
ザイード はい、そうです。
判事   1995年8月29日生まれ、4日後に入院6か月になります。というわけで、現在状況について再審査が必要になります。
ザイード 僕は間違えました。
判事   え、何と ?
ザイード 間違いを犯しました。間違えました。5月14日にある間違いを警察に知らせたんです。警察に電話をしました。午前3時でした。
判事   それで ? 何があったんですか ?
ザイード うちからです。警察を呼んだのは、うちの隣でセクトの集会をしていたからです。
判事   お隣でセクトの集会を ? 何をしていたんですか ?
ザイード イスラム教徒の集会です。
判事   イスラム教徒の、なるほど。
ザイード イスラム教徒というよりイスラム過激派といいたいです。。
判事   イスラム過激派、つまりあなたのお隣がテロリストということ。
ザイード テロリストです。そうです、テロリストです。
判事   わかりました。
ザイード 証拠があるんです。地下倉庫に行ったら、そこで、そこで、地下倉庫で、カラシニコフを見つけたんです。それで、それを掴んで、そんなもので間違いが起こったら嫌だから掴んで。。
判事   それで、そのカラシニコフを何処にしまったんですか ?
ザイード 引き出しの一番上にしまいした。おばあちゃんが届かないところに。
判事   なるほど。それで、最近の診断書ですけど、いいですか、こんな内容です。あなたの行動は重度かつ執拗な狂信的な統合失調症、難治的併発多重依存症により起こす行動の混乱が激しいために入院を承認されました。ということは、想像するに前から大麻をやってたんではないか思うんだが。あなたは何を使ってたのかね、薬としては ?
ザイード 大麻とコカインです。
判事   それだ。コカインだ。刃物などで介護士に何度も危害を加える話が記録されてますよ。それから、君は未成年だった頃に前科がいくつか記録されてます。まだ君は若いから、まだ二十歳なんですね。
ザイード 21歳てす。
判事   まだ21にはなってないよ。君は96年の8月生まれだから。今20歳と半年です。まだ20歳と半年になったばかりだ。だから、医療チームは、国の決定に基づいて精神科の治療が必要と判断して、引き続きその必要があるといってますよ。あなたご自身はどうお考えですか ?
ザイード それは正しいと思います。最後の言葉を言いたいと思います。
判事   あなたはあと1か月いたいと言ってるのですね。そして1か月後に退院をと。あなたの希望はそれでいいですか ?
ザイード いいえ、そうじゃありません。
判事   じゃあ、何を言いたいのですか ?
弁護士  彼は最後の言葉を言いたいと言ったかと思います、判事さん。
判事   ああ、最後の言葉、ごめんなさい。何をおっしゃりたいのですか ? (mois とmotの聞き違い)
ザイード 僕はちょうど悪い時に悪い場所を通りかかったんだ。それで、運よく、運よくこのカラシが僕の手に入った。僕は金の卵なんだ。僕は鼻からカラシの子なんだ。。僕は正直だ。カラシは役に立つだろう。絶対に、カラシは役に立つ。でも、でも、悪いやつらをやっつけるのに。悪いやつら(イスラム過激派)はきたないんだ。侮辱してやる、こう言って。。
判事   いや、侮辱することは言わない方がいい。その方が。
ザイード 奴らみたいなのは間抜けでイスラムなんか信じて、人のうちに強盗に入って、それは僕らの2つの国の戦争だ !
判事   いいでしょう。入院についてはどう思いますか ? 続けたほうがいいですか、それとも終わりにした方がいいと思いますか ?
ザイード 自分では終わりにしたいと思います。
判事   あなたの希望は終わりにしたいということですね、それでそれは可能ですか ? いい質問でしょう。
ザイード すみません。
判事   では、先生、あなたのご意見は ?
弁護士  はい、判事さん。実際、彼はこの強制入院があまり気には入ってません。同時に治療が今のところ役立っているとも示唆しています。実際その意識があり、治療が自分には必要だと。しかし、本当に難しいのは、その入院の形態についてで、異議を述べています。
判事   心地よくないと。
弁護士  (はい、と身振りで)
判事   わかりました。今日のところは引き続き治療を承認することにしました。あなたも静かなところに隔離されてだいぶ穏やかになりましたから、今後はよくなっていくことでしょう。でも引き続き。。
ザイード そのとおりです。僕はキチガイです。
判事   そうは言ってません。私が言ってるのは
ザイード 僕は1080足す20がいくつになるかわかりません。
判事   1080足す20はきっかり1100だよ。で、その数字は何なの ?
ザイード 僕は2000だと思ったんです。
判事   いや、1080足す20は1100だ。でもそんなことじゃない。それがてきないから、足し算ができないからじゃあない。
ザイード 僕が知的じゃないから。。
判事   そういうことじゃない。。
ザイード 僕は精神病なんだ、ひどい精神病なんだ。
判事   違います。あなたは治療が必要なんです。まだ混乱があるからもう少し入院が必要だね。
ザイード 僕はきちがいだ。僕は人として精神が狂気なんだ。劣った精神なんだ。生まれつきの劣っているだ。
判事   じゃ、いいですね、よかったら、ここにサインしてください。
弁護士  ここよ。
ザイード あの、あんまり好きじゃないものがあるんですが。小さな緑色の枡がなくて
判事   小さな緑色の枡って ?
ザイード 小さな緑いろの枡で印をつけるやつ。
判事   何のこと ?
(沈黙)
ザイード ええ、そう。
判事   何のことを言っているのかわからないが。
ザイード 僕もよくわからないけど。小さい枡で、ご滞在はいかがでしたか ?って訊くあれ。
判事   ああ、そう、満足度チェック表のことですね。待遇はいかがでしたか?とか。そういうものではありませんよ。
弁護士  ありがとうございます。
判事   はい、これで今日は終わりです。あなたはまだもう少しここの施設にいることになります。治療のために。いいですね ?
ザイード はい。
判事   はいどうぞ。よい1日をお過ごしくださいね。
ザイード はい、ありがとうございます。
判事   しっかり治しなさいよ。
ザイード ありがとうございます。ご恩返しは必ず。もし、いつかサッカーのプロ選手になった暁には、この病院に寄付します。
判事   わかりました。みんな待ってるから。
ザイード そうだとうれしいです。
弁護士  わかりました。
判事   その決意を忘れないように。
ザイート はい。
判事   そう、じゃあさようなら。
ザイード さようなら。
弁護士  さあ、行きましょう。さようなら、判事さん。




2/28 退院審査請求による審査
No 7 ヌオーリ 男性 34歳, 判事 : 男性 60歳くらい, 弁護士 女性 40歳くらい
判事   こんにちは。ヌオーリさん。
ヌオーリ こんにちは。
判事   どうぞおかけください。いいですね。あなたには以前お会いしてますね。私は裁判所の判事です。あなたはマイアンベ ・ヌオーリさんですね。
ヌオーリ そのとおりです。
判事   ですね。あなたは82年の3月13日アンゴラのルワンダで生まれました。あなたはアンゴラ人ですね。
ヌオーリ そうです。
判事   つまり、もちろん、だからそこに居られないんですね。何年も路上生活をしていたんですね。そして。。
ヌオーリ 刑務所に入れられました。
判事   そうですね、あなたは刑務所に入れられていました。それで拘置所に拘留されていたけれども責任能力がないと認められたんですね。というわけでそのあと再審審査室が精神科入院を言い渡したわけですね。
ヌオーリ そうです。全て正しく行われました。心配ありません。8年間法を犯すようなことはしていません。だから、僕が他の人みたいに外出するのをどうして許可してもらえないのか理解できません。
判事   はい、でも、そうですね、分かります。
ヌオーリ 病院を出て早く仕事を探したいんです。病院ではもう何もすることがないから。
判事   あなたは、法律の規定に従ってうちの書記に、あなたの件について審査を依頼したんですね。強制入院を終わりにできるかどうか。さて、おっしゃってくださいね、その点についてあなたの状況を明らかにしたいと思います。今どの棟にいらっしゃいますか ?
ヌオーリ キャンディレです。
判事   はい、その通りですね。以前あなたは難病棟UMDにいたことがありましたね。
ヌオーリ そうです。
判事   難病棟UMDを出てからどのくらい経ちますか ?
ヌオーリ 4年になります。
判事   4年ですね、確かに。で、今の病棟はいかがですか ?
ヌオーリ とってもうまくいっています。何も言われませんし。詳しく言うと、オディヤー先生が病院から出て、街へ外出する許可をくれたんです。病院から出られる許可をもらったんです。社会復帰の大学に通う承認を貰いました。だから、外に出て、盗んだりみたいな馬鹿なことをしないで落ち着いて暮らせるようにその手続きを進めてくれています。
判事   その通りです。
ヌオーリ 僕は仕事をします。そうすれば自分の欲しいものを自由に自分で買えます。誰にも邪魔されたり煩わされたりしないで、僕も裁判所を煩わせずに。
判事   治療も続けなければいけませんよ。
ヌオーリ もちろんです。
判事   いいですよ。あなたがこれまでしてきたことを繰り返すことはしませんが、あなたの調書はとても分厚いんです。何年にも渡りますから。
ヌオーリ 仕事がなかったからです。仕事をしていなかったから。僕は
判事   そうですが、そのことはではなくて、あなたの過去を語るためにここにいるのではないから。
ヌオーリ お金が なかったんです。
判事   そうですね、なるほど。でもあなたは2008年に13回も女の人に切りかかって殺人未遂とされています。責任能力はないとされましたが、そういうわけで拘置所の後に精神科に強制入院となったわけですから。それは本当に重大な罪です。決して2度としてはいけないことですよ。もちろん、住民の安全のためにですが、あなた自身の益のためにもですよ。だからこそあなたのために、率直に言いますが、注意しているんです。先生もそのために。。
ヌオーリ でも、先生がすべてできるわけではありません。僕がいます。僕自身の秩序があります。法に従わなければならないのは僕です。フランスを尊重しなければならないのは僕です。オディアー先生がフランスを大切にするのではありません。薬を僕に投与する人がすべてを解決できるわけではありません。僕は落ち着く必要がありました。そして今日はとてもとても落ち着いています。AAH(障碍者手当, 月860ユーロ)。それがあれば頭をもっと理性的に働かせることができます。僕は病気になってしまったから。そのせいで誰かを脅したりしたんです。打ちのめされていたんです。住むアパートもなくて。本当にすっからかんだった。ホームレスだったんです。もうどうにもできなくなってぶち切れてしまったんです。
判事   そう、でもそこを言ってるんではなくて、リヨンの精神分析専門の先生が仰るように、ご自分でも病気があることはわかっていますね。
ヌオーリ ああ、でも誰でもいくらかそうですよ。
判事   まあ、いいでしょう。ラビー先生は「重度の妄想型統合失調」と言ってますから気を付けてくださいね。怖がらせるために言うのではありません。よい治療があれば平均的な人として暮らすことができますから。ただ、過去にあなたが出会った問題、犯した間違いが、あなたの病気と関係があって、それが今でも少しあなたには残っているということです。そのことも忘れてはいけませんよ。わかりましたね、ヌオーリさん。
ヌオーリ はい、はい、わかっています。
判事   では弁護士さんのご意見を伺いましょうか。
弁護士  一つ質問があります。質問を許可していただけますか ?  (ヌオーリに向かって)長いこと入院してきたけど、外の治療を受けてみる気はありますか ?
ヌオーリ 僕はその質問に答える前に、知りたいことがあります。なぜ僕らは病気になるのだろう ?
判事   あっ ! (口があいたまま)
ヌオーリ なぜ僕らはみんな統合失調という病気に苦しむんだろう ? それが知りたいんです。
判事   みんなではないでしょう。
ヌオーリ 僕は病気だなんて知らなかったんです。
判事   そのことでは誰もせめてはいないよ。
ヌオーリ 率直に言わせてもらいたいのですが、 僕が知りたいのは、もし治ったらみんな僕になんでも言いたい放題言うのを止めるんだろうか ? って言うのも僕はどちらにせよ弱者でもあるんです。ああそうだ、僕は成功するにはいろいろ困難があった。でもぼくがうまくいかなかったのはそのせいではないんです。大事なのはまだ能力もあって、尊重するべき義務があるということ。法に従わなくてはいけないということ。今なら僕は法律が何なのかを知ってます。何をしなければならないのかが分かります。自分の意識や行動に気づいているし、だからもう二度としません。なぜならこれが僕にくれた最後のチャンスだから。それをしっかり生かさなければいけないんです。それだけです。
判事   その通りです。弁護士さん、どうぞ。
弁護士  ありがとうございます、判事さん。彼の状況に関して診断書で気になるのは二次的な条件と思われる状況や動機についてです。大事なのは今日を確認することであって、刃物で切りつけたとされる8年前ではありません。その事実は彼も否定していませんし、今日の事実を確認すること、現在、彼が今でも人々の安全を危うくする人なのか、公衆に危害を加える可能性があるのかです。簡潔に申しますと、ひとつ考慮に入れていただきたいことがあります。ジュリーという彼の友人がAHHの入居人として社会的住宅を提供してもいいと言ってくれていて、見守ることができるとおっしゃっているんです。私からは以上です。
判事   わかりました。確かに、診断書はあまり詳しく書かれてはいませんね。しかし、ヌオーリさんの調書はとても分厚いので、膨大な過去がありますからね。まじめに理性的な決断を要します。ですから、本日午後、審議の上で決定します。午後には答えがわかりますから。さて、以上です、ヌオーリさん。




2/22 入院審査
ベファー 女性 37歳 判事 : 女性 60歳くらい


判事   えー、あなたは間もなく強制入院から12日を迎えますね。
ベファー はい。。
判事   えー、私の役割は医師とは全く別です。ただあなたが入院されたときの手続きに問題がなかったか、法が適切に守られていたかを確認することです。
ベファー はい。。
判事   特に、私は診断書を参照しながらあなたが同意のないままフルタイムで入院したのには十分な理由があるかどうかを、12日以内に見ることになっています。
ベファー わかりました。。
判事   私の役割はわかりましたか ?
ベファー はい。。
判事   いいでしょう。この入院についてあなたはどう思いますか ?
ベファー えっと、私は同意しません。だって私は死ぬためにはうちに帰りたいんです。
判事   死ぬために。
ベファー 私は3階から飛び降りて死にたいんです。でみんなは私にそうさせまいとしています。そのせいでみんなは私に病院に留まらせたいんです。
判事   そう。あなたはみんながあなたが自殺するのを放っておきたくないってことがわかるのね。
ベファー いいえ、わかりません。
判事   そうですか。
ベファー みんなは、家族が寂しがるよとか、あなたのペットたちが寂しがるよとか言うけど、私の苦しみについては何も考えてないじゃあないですか ?
判事   だから、ここで治して苦しみが減っていくのよ。
ベファー いいえ、強制入院でここにいなければならないからいるけど、全然治りたくなんかないです。私は死にたいんです。私を放っておいて欲しい。私は37年間苦しみ続けた、苦しみ過ぎたんです。もうじき37歳になるけれど、私の人生は苦しいだけでした。確かにいい時もあったけど、それ以上に沢山、本当に沢山の苦しみがありました。
判事   いいでしょう。あのう、何か見て思うところはありますか ?
後見人  いいえ。実際ベファーさんは被後見人となっています。私たちもベファーさんのことをよく知っています。私は彼女をとてもよく知っています。彼女は治療が必要だと信じます。
判事   彼女は何が必要と ?
後見人  彼女は自分の治療をする必要があります。
判事   自身の治療が必要と。
後見人  彼女を治療する必要があります。入院は適切かと、その、彼女が自信を回復するために、思います。
判事   彼女は被後見人になってどのくらいですか ?
後見人  大体13年くらいです。
判事   13年。。もし暑かったらアノラックを脱いでくださいね、暑くないですか ?
ベファー はい。。
判事   いいでしょう。弁護士さん、何か見て思うところはありますか ?
弁護士  入院の状態については何もありません。特には全く所見はありません。時を得て正しく遂行されていると思います。実際、現に自殺の危険があったことが過去にも証明されていますし。彼女が語ってくれた以外にも。彼女は自殺を試みたことがあり、それが未遂に終わったために長い入院経験があります。今日は、彼女ははっきりと病院にはいたくないと言っています。がそれが自殺をするためだとすると。。私たちは少し混乱します。しかし、どちらにしても前向きな案件があります。彼女の説明にはなかったことですが。と言うのはソーシャルワーカーの方と家に帰れる可能性について話し合ったのですが、個室付きの療養型アパートはどうかと。原因となっているのは。。
ベファー 孤独が重いんです。もう耐えられない。
弁護士  それなら集団生活ができるでしょうから。
判事   確かにとてもいい考えだと思うわ、療養型アパートというのは。
ベファー はい、そう思います。それはとてもいい考えです。
判事   まだペットの飼える療養型アパートというのがあるかどうかは保証がないですけどね。
ベファー 多分、犬か少なくとも猫なら見つかるかも。離れたくないんです。犬は時々会えるときに会えればいいけど、猫とは離れられないです。お願いです。それは子供を取り上げられるようなものです。
判事   わかりました。いいですか、それについてはまだ決められないですよ。まだ現実に実現可能かどうかは決まっていませんよ。
ベファー 現実は、治すことです。
判事   そうです、いいですね。そのとおりです。
ベファー でも、そんなことしたくないんです。
判事   そう、でも実際、そのためにあなたを治療しているのよ。あなたが自殺しようとしから。。
ベファー でも、あなたにそれをする権利があるんですか ?
判事   さて、そうね、私は。。私は法律が私にあなたが自殺していいかどうかという質問に答えを出すことを要請しているとは思わないけど、だってそれは私の役割ではないから、 ね ? 私は一つだけ確認したいのは、すべての診断の結果が一致しているということです。 手続きは正当に行われましたので今日のところは引き続き強制入院のをという診断書の方針を承認します。
ベファー わかりました。
判事   焦ってはだめですよ。でないとまた元の木阿弥になってしまうから。いいですね。あなたはここにサインしてください。コピーを差し上げます。それから、10日後に再審請求できることを覚えておいてください。
ベファー 再審請求しても何の得にもなりません。勝つ見込みもないってことはよくわかってますから。
判事   そうね、それは賢いわね。
ベファー いえ、そうではなく、それで勝てる見込みがないことを知っていんです。
後見人  君の利益にかなうことだから。
判事   妥当な表現ね。



全10話対訳↓
司法による入退院審査、ドキュメンタリー『12日』 - ~~ 市民による地域精神保健 ~~ 



2/10 入院審査
No 2  アニック・ムーリ 女性55歳 判事 男性 60歳位 弁護士 男性 40歳位 
判事   こんにちは。お座りください。あなたはアニックムーリさんですね。
アニック はい、そうです。
判事   誕生日は1961年、10月28日、生まれはリヨンのどこですか ?
アニック 二番街区です。
判事   二番ですね、はい。
アニック ホテルデュー病院です。リヨンでいいおうちの人たちと同じところです。
判事   は ?
アニック 生まれのいい人たちと同じ病院です。(照れる)
判事   はいはいはい、他の病院で生まれる人もいますからね。それも許可されてますから。住まいはリヨン市ヴェルレーヌ通38番 、5番街ですね。
アニック その通りです。
判事   独身ですか ?
アニック はい。
判事   お仕事は何ですか ?
アニック オレンジで働いています。あの会社。。
判事   ああ、はいはい、オレンジね、電話会社の。
アニック 昔のフランステレコムです。
判事   はいはい、いいですよ、わかりました。どの部署にいますか ? どこですか ?
アニック 私の部署ですか ?
判事   はい。
アニック 課金サービス課てす。
判事   はい、いいですよ。では、そうですね、間違いなければ、あなたが具合いが悪くなってエドワードエリオ病院に来たのは、11月11日ですね。
アニック あまりよくありませんでしたが、それほど悪くもありませんでした。
判事   それは知りませんが。つまり…
アニック 医師たちはそうおっしゃってますが。。
判事   まずあなたの雇用主が、つまりあなたの会社のだれかが…
アニック 雇用主です。
判事   あなたの具合がよくないのを見てリヨンエドワードエリオ病院に連れてくることにしたのですね。
アニック 彼は、自分がこんなに親切でこんなに人間的でこんなに人を思ってるってことを見せたかったんです。私が何かやらかすんじゃないかと決めつけて。
判事   何かご自身に心配ごとがあったんじゃ ?
アニック 私に ? いいえ !
判事   私は何も知りませんが。何も。
アニック でも私は泣いてました。
判事   そう。
アニック 朝にも同じことがあって。
判事   何があったんですか ?
アニック 部長とちょっと摩擦があって、彼のせいで何も食べてなくて。私… ふう ! 同僚たちもみんな沈黙して秘密にしてるし。ちょっと微妙で。。(震えた声で)
判事   はいはい、わかりました。で、どうでしょう、病院では具合はいかがですか ? 来た当時より良くなりましたか ?
アニック はい、だいぶ気分がよくなりました。だって、私が来たときは縛られてたんですから。
判事   それは調書にも書かれていました。
アニック どっちにしても、そんな必要はなかったでしょ! それはすごい暴力だったのよ ! (訴える)
判事   それは医師の責任を果たすための医療的判断ですから。あなたが興奮してたから、医師たちはそれが必要と判断したんですよ。
アニック いいえ、錯乱していたと言われることについて私は医師達とは見解を共にしません。
判事   はい。
アニック だって私はいつもと変わらないようにしていたし。ここに着いたときだって私の扱いに対して大人しくしてたのに。いきなり、、私の周りに何人いたか知ってる ? 12人よ、12人 ! 服を脱がされたかと思うとパジャマを着せられて。。
判事   錯乱に対応するには大勢人が必要だと思いますが。。
アニック それはそうでしょうけど、12人もよってたかって私を括り付けて、2分後には何もできない状態だったわ。それってとても暴力的ですよね ? !
判事   そうですね、そう思います。
アニック 想像してみてください。わたしは自制心を保って彼らのするままにしていたんです。観念して脳は思考停止になりました。
判事   つまり要約すると?
アニック 錯乱してませんでした !
判事   あなたはもう少しここの病院にいた方がいいと思いますか ?
アニック ええ、ええ。
判事   医師もあなたがここに入院していた方がいいというのは正しいでしょう。
アニック でも、いづれにせよこれは言っておきたいわ。ここに来てどのくらいかしら ?
弁護士  10月からです。
アニック そうだわ、10月のことでした。例年のリヨン光の映画祭があって。
判事   知ってますよ。
アニック でしょ。私行くのが大好きで毎年行ってるの。土曜日だったわ、何日かは忘れたけど。その土曜の日に…私写真撮るのが好きなの。ちょっと時間頂いていいですか ? 涙がでて… 
判事   はいはい。大丈夫ですよ。心配しないで。
アニック 映画祭に行くためにかばんとカメラを用意して。
判事   光の映画祭ですね。
アニック 土曜日で、素晴らしい日で、太陽が… (泣き声)
判事   それで ?
アニック それなのにそこに行く代わりに、救急に行かなければならなかったの。
判事   気分がよくなかったからですね。
アニック いえ、気分はよくなかったですけど、金曜日に…金曜日じゃないわ、私金曜は仕事じゃないから。木曜にまた嫌なことがあって、職場でハラスメントがあったんです。
判事   職場でうまくいかないことがあったんですね。
アニック そうです。
判事   私の理解するところでは、そうですね。
アニック それが原因だと思います。
判事   はい、よくわかりますよ、あなたの仕事には難しいことです。
アニック とてもとてもきついです。
判事   それではピカール弁護士のご意見を伺いましょうか。
アニック すみません。(涙をふく)
判事   いえ大丈夫ですよ、どうも。
弁護士  ありがとうございます、判事さん。この調書の中には入院手続きについては特に指摘することはありません。ただ、アニックさんとの聴き取り調査で一つ指摘しておきたいことがあります。というのは、職場でアニックさんに苦痛を強いた迫害についてですが、医師にその解釈について質問したのですが。。彼は、オレンジで働いていて…オレンジで起こっている訴訟のうわさはみな聞いていると思います。ですから、アニックさんを苦しめたのも同じようなことかと。
アニック 迫害です。
弁護士  医師がそういったわけではありませんので、医学的には迫害妄想というのかもしれませんが、この職場における暴力、わたしは敢えてそう言いたいと思います。手続きについては特に見解はありません。
判事   ありがとうございます、先生。確かに私もそう思います。もう少し入院は継続する必要があるようですね。書記さん、私は入院継続手続きを進めたいと思います。
アニック いいです。まだ傷口があいたままだから。
判事   というのは、間もなく医師と退院できる日を相談することになるということですから。
アニック 退院してもっと力をつけるために職場に戻ります。
判事   それが、間違いありません。
アニック 私、絶対やりぬくわ。自分に誓ったんです。



予告編↓



“12 jours”, de Raymond Depardon - bande-annonce

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