~~ 市民による地域精神保健 ~~ 

- 健康は権利 - (無断転載はお断りします) 中村佳世

障害者権利条約、誤訳部分について

【国連勧告】

日本の施策は全体としてパターナリスティックで医学モデルに基づいたものであると評され、人権を中心とした社会モデルへの移行を進めるように、との助言がありました。

パターナリズムは国民感情と密接に結びついたものであることも忘れてはならないでしょう。


【障害者権利条約翻訳の不備について】

まず、こちらが日本語訳の障害者権利条約 (外務省訳)です。

障害者の権利に関する条約 日本語版(外務省訳) - ~~ 市民による地域精神保健 ~~ 

日本の報告に関する総括所見はこちらです。
英語版  

https://www.mhlw.go.jp/content/12601000/001001554.pdf 

日本語訳 

https://gigi.muragon.com/entry/177.html  


また、国連勧告では翻訳の誤りについても指摘されました。迫田朋子さんも、藤井克典さんとの対談の中で取り上げています。(videonews.com)
日本の障害者施策は世界基準とどこがずれているのか(藤井克徳日本障害者協議会代表) -マル激 


以下が誤りを指摘された語句です。では、正しくはどのように訳したらよいのでしょうか?


1 “accessibility”, “access”,
誤) 施設やサービス等の利用の容易さ 
求められているのは施設やサービスだけではなく、情報、法的な手段を含む手段へのアクセスが「確実に」「平等に」得られる事です。
2  “communication”,
誤) 意思疎通
意思を一方的に伝えることではなく、双方向の伝達と、それを可能にするあらゆる手段を意味します。手段の開発も奨励しています。
3 “inclusion”, “inclusive”,
誤) 包容 
社会的包摂が公式な訳語です。包容のように温情的なものではなく、当然の権利としてどんな排除も受けずに年齢に応じた社会参加を保証するものです。
4 “habilitation & rehabilitation”;
誤) ハビリテーション (適応のための技能の習得)
能力の向上。道具の使い方に慣れるなど個人の能力を高め、生活の質を向上させたり、人生の可能性を増すことです。
適応のための、と限定的な表現がされることで社会側の適応責任が隠され、専ら責任が本人にあるかのような印象を与えています。

項目内容を読むとむしろ逆で、社会の側が適応して配慮すること、と書かれています。
5 “personal assistance”
誤) 個別の支援 
一般的に、人により人を支援する人的な支援という意味で、人に重点があります。

個別の支援ならばpersonalized assistance、内容は間違っていないのですが、物質的支援も含めて個別に、という意味で違ったニュアンスになります。
6 “particular living arrangement”
誤) 特定の生活施設で生活する義務を負わないこと
特定の『施設』ではなく、どんな場所においても、自宅その他の場所でも、特別に誂えた生活を強いられることはなく、選択の自由と要求の権利がある事を言うのだと思います。
7 17 条
“Protection of the intégrity of the person”
誤) 個人をそのままの状態で保護すること

正) 個人の全ての権利の総体が保持尊重される

integrity=個人の心身に関する全ての権利、が守られるという意味で、守られるのは権利の一つひとつです。個人を保護するというパターナリズム的な意味はありません。

原語の権利は複数形で、抽象的な概念としてではなく、一つひとつの権利がイメージされています。生きる権利、幸福追求権、選挙権、裁判を受ける権利、証人となる権利、etcetc. むしろ個人の権利は絶対的なもの、勝手に触るなという強いメッセージがあります。

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